■ 生菌数の算定について | |
【質問】
はじめまして。Google検索でサイトを知り, 勉強させて頂いております。私は生活クラブ生協という生活協同組合で食品検査を担当する部署にいる槌田博をいうものです。元々の専門は残留農薬検査ですが, 検査室では微生物検査も行っており, 部下が作成した検査報告書に署名する立場です。関連した質問が4つあります。どうぞよろしくお願いします。 (1) 生菌数の算定について
N= ΣC/(n1+0.1n2)d
となり, 質問者の云うとおりの計算結果で出るように思われます。如何でしょうか? (2) 関連して
(3) 本題の質問
一般生菌数を求めるために, とあるサンプルを10倍希釈して1枚, 100倍希釈して1枚作成して培養したところ, 10倍希釈のコロニー数が300以上 (300個を確認したところで計数を中止しました) になり, 100倍希釈のコロニー数が19個となり, いずれも30〜300の範囲に納まりませんでした。このような場合にどのように対処したらよいかについて, 食品衛生検査指針2004には記述がありません。そのためwebで情報検索をしていて, このサイトに辿りつきました。(2) の質問は, その「表1」にこのような場合の対処方法が記述されているのではないかという期待からでした。現在の私が考えられる対応方法は4つあります。 (A) 10倍希釈の結果を採用して,「3,000以上」と報告する。
私としては (C) が正解と思っていますが, 違う意見の職員もあり, 合理的な説明をする必要があります。仮に, 真の値が3,000であったとして, +側にも, −側にも同じ確率で測定誤差があると仮定すると, 4つの場合が考えられます。 (case 1) 10倍希釈+誤差 (300以上), 100倍希釈+誤差 (300以上)・・・このケースは, 100倍希釈の結果が採用されて, 報告できます。 (case 2) 10倍希釈+誤差 (300以上), 100倍希釈−誤差 (30未満)・・・このケースが今回の質問になります。 (case 3) 10倍希釈−誤差 (300未満), 100倍希釈+誤差 (30以上)・・・このケースは両方の結果が採用されて, 質問1のように平均操作で結果を報告できます。 (case 4) 10倍希釈−誤差 (300未満), 100倍希釈−誤差 (30未満)・・・このケースは10倍希釈の結果が採用されて, 報告できます。 場合分けはこれですべてです。25%の確率で出現する (case 2) について, 今後のためにも対応を確実に決めて置く必要があります。10倍希釈2枚, 100倍希釈2枚で操作すれば確率は下がりますが, それでも1/16の確率でこの事象が発生してしまいます。 (4) 培地の大きさについて
(A) 面積が1/3であるから, コロニーの密度を同じにするため, 10〜100の範囲のものを採用する。 (B) 検査結果の数値を有効数字2桁で算出するためには, 統計的に30以上のコロニー数があったほうがよい。培地の面積とは別の理由である。10倍毎の希釈段階を作ることから, 30〜300の範囲とする。 (C) 300以上のコロニーは, コロニー同士が重なってしまう可能性が大きくなる。 (D) 数が多くなると, 計数にも労力がかかりすぎる。500個も数えていられない。 私は(A)と(B)では, (B) が正解なのだと思っていますが, 先生のご教授をお願いいたします。 欲張って4点も質問させていただきましたが, いずれも関連して私どもの今回の問題解決の方法をみつけるための質問です。同じ疑問をもたれている方々も多くいらっしゃるのではないかとも思います。是非とも、よろしくお願いいたします。 【回答】
(2) 関連して
(3) 25〜250のコロニ-が得られなかった場合: 100倍希釈で325, 1,000倍希釈で20の場合は, 250に近いほうのコロニーを数えて報告する。この場合では, “33,000推定”と記載する。 (4) すべての平板で25未満の時: 低い希釈倍率での菌数を測定して報告する。この時も, 数字の後に“推定”と記載する。 (5)まったくコロニーが観察できなかった時: 100倍希釈で0の時, “<100推定”と報告する。 (6)コロニーが密集している時 (250以上の時): もし1 平方cmにコロニーが10未満の場合は, 12平方cm内 (1平方cmを横に6箇所, それに直角の方向に6箇所, 合計12平方cm・・注意事項として, 交差する部分は測定区画をずらし, 2度同じところを測定しないようにする) のコロニーを測定し1平方cm当たりの菌数を算出する。また, 1平方cmにコロニーが10以上の場合は, 代表的な4箇所を測定し1平方cm当たりの菌数を算出する。ガラスのシャーレ (直径 9 cm)の時は, その面積が約64平方cmであるため, 64倍し, またプラスチックのシャーレ (直径 8.5 cm) の時は, 面積が約56平方cmなので, 56倍する。例えば, プラスチック・シャーレで1,000倍希釈での平均菌数が15/平方cmの場合は, 56倍して840となり, “840,000 (推定)”とする。もし, 1平方cmに100以上のコロニーが確認されたら, プラスチック・シャーレの場合, 一番高い希釈率のコロニー数を5,600倍して報告する。その場合, TNTC (多くて測定不能) という報告はしない。 (7) 拡散コロニーがあった場合: 拡散コロニーがシャーレの1/2以下の場合は測定可能な区画を測定して計算する。拡散コロニーのため測定不能の場合は, “拡散”と記載する。抑制物質などが入っている検体で, 希釈をするとその抑制効果が弱まる時があり, 高希釈度での計測数が逆に多く出る場合があるが, その時は“LA”と記載する。 食品衛生検査指針2004の方法は, 日本の食品衛生法に基づいて書かれています。「Compendium of Methods for The Microbiological Examination of Foods」 3rd ed. (American Public Health Association) は米国のものです。使い分けは, 諸外国のものは参考にとどめ, 日本国内では食品衛生法や検査指針を基準に考えるのが妥当だと思います。 (3) 本題の質問
(4) 培地の大きさについて
(日水製薬・小高 秀正)
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