05/01/11
■ 真菌用培地に発育する細菌
【質問】
 当方, 粉末食品メーカーで品質管理を担当しているものです。

 “真菌の検査”でクロラムフェニコール加ポテトデキストロース寒天培地を使用しております。この培地に発育するのは, 一般的に真菌用培地ですので, カビ・酵母であると思います。カビ・酵母は判定の際に判別が割と安易だとは思うのですが, この培地 (ポテト) に一般生菌用培地である標準寒天培地によく発育する桿菌や球菌のようなものが発育することがたまにあります。これらの菌は一体何なのでしょうか??? これらも真菌としてカウントするべきなのでしょうか??? またクロラムフェニコールを加えることで, 真菌以外の菌の発育を抑制している筈なのに, 何故このような菌が発育してしまうのでしょうか???

【回答】
 まず, “クロラムフェニコール加ポテトデキストロース寒天培地”の意味を考えてみてください。ポテト・デキストロース培地だと, 何故いけないのでしょう??? 確かにこの培地は真菌培養用の培地ですが, 真菌が良好に発育するという性質はあるものの, その他の細菌も同じように発育してくるので, これを防ぐ目的でクロラムフェニコールを添加したのです。しかし, クロラムフェニコールという薬剤は比較的古い抗菌薬で, このクロラムフェニコールがまったく効かない細菌はヒト体内, 自然界にたくさんいます。特に, 自然界に広く分布する緑膿菌やその他のブドウ糖非発酵菌などがその代表です。クロラムフェニコールでは, 真菌以外の, すべての細菌の発育が抑えられる訳ではありません。

 “クロラムフェニコール加ポテトデキストロース寒天培地”に発育した真菌以外の菌集落も“カウントする”べきでしょうか??? という質問ですが, むしろ回答者からお尋ねしたいと思います。この培地で検査する目的はなんでしょうか??? (1) 真菌の数 (濃度) を検査したい, (2) この培地に発育できる微生物の数 (濃度) を知りたい??? もし前者が目的なら, 真菌でない菌集落をカウントすべきではないでしょう。しかし, もし後者が目的なら, 真菌, 真菌でないを問わず, 逆に, すべてカウントすべきです。目的と結果を混同しないでください。

(琉球大学・山根 誠久)


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