06/07/13
■ 食品材料の検査について
【質問】
 はじめまして。いつも「質問箱」を拝見させていただいています。大変基本的な質問で申し訳ないですが, ご回答いただければと思っています。どうぞよろしくお願いします。私は食品メーカーで材料の受入検査をやっており, 菌検査に携わっている立場です。

質問 (1) 試料原液について
 試料原液を作成する時, 試料を10 gram, 滅菌生理食塩水を90 mlで作成しているのですが, 試料が少ない場合には4〜5 gramぐらいで試料原液を作成しています。結果が大幅に狂うことはあるのでしょうか???

 また, 試料原液 (10倍希釈したもの) ですが, もしこの原液を塗沫法 (標準寒天培地に0.1 mlをたらしコーンラージ棒でのばす) で培養して, 10個のコロニーが確認された場合, 原液なので 10 cfu/0.1 mlつまり100 cfu/mlと表示すべきなのか, 原液でも10倍希釈しているので1000 cfu/mlと表示するべきなのかがわかりません。教えていただけないでしょうか???

質問 (2) 大腸菌・大腸菌群について
 材料の受入の一環で, 粉の細菌検査を行います。その時, 生培地 (栄研器材のESコリマーク使用) を用いて菌検査を行うのですが, 大腸菌群が発生する場合があります。未加熱食品なので発生してもおかしくないのでしょうが, 粉自体に培地が影響を受け, 大腸菌群が発生したように見えているのか, 本当に発生しているのかがわかりません。本当に発生しているとしても, 食品衛生法自体に規格がなく, どのぐらいの社内規格に定めたらいいのかもわかりません。参考までに, どのくらいの規格にしたらよいか教えて頂ければ嬉しいです。

以上, ふたつも質問していましましたが, ご回答のほうよろしくお願い致します。

【回答】
質問 (1) 試料原液の調製について
 例えば, 試料10 gramに希釈水90 mlで調製した試料原液と, 試料5 gramに希釈水90 mlで調製した試料原液の差のことであれば, 後者は, 前者の約半分量の試料しか検査していないことになります。ついては, 試料の量が少ない場合は, 試料に対して9倍量の希釈水を加えて試料原液にするのがよいと考えます。例えば, 試料5 gramであれば, 希釈水は45 mlで調製します。

 また塗沫法での菌数の求め方は1,000 cfu/gramが正解です。試料原液に惑わされて難しく考える方が大変多くいます。基本は, カウントした培地に何グラムの検体が入っているかが問題です。質問例からは, 検体10 gramを90 mlの希釈水を入れて均質化し, この 0.1 ml (検体は0.01 gram入っている計算になります) を培地に接種して10個の集落を得たということから, 1gram当たりに換算すれば, 10個×100 (培地に入れた検体0.01 gramは1 ramgの1/100なので) =1,000となります。

質問 (2) 大腸菌・大腸菌群について
 ESコリマーク寒天上の集落の確認については, 疑われる集落を新しいESコリマーク寒天に再分離することを勧めます。新しいESコリマーク寒天に同じ様な集落が発生すれば, 粉自体の影響でないことがわかります。社内規格については, 粉自体がその後どのような加工を経て, どの様な製品になるのか, または取り扱われるのかによって勘案する必要があると思います。ただ, 衛生状態の向上を考えれば, 段階的に少なくする努力は必要と思います。また今回は, 大腸菌群についての質問ですが, 細菌数も検査されていると思いますので, 合せて考えたほうがよいかと思います。

(栄研器材・柳沼 健史)


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