06/02/02
■ 黄色ブドウ球菌の卵黄反応について
【質問】
 先日, 黄色ブドウ球菌について質問をさせていただきました食品工場で品質管理をしているものです。また疑問点が浮上したため, 質問させていただきます。

 卵黄加マンニットソルト培地で, 黄色反応を示し,「目玉焼き」のようなコロニーを形成しているものが“黄色ブドウ球菌”だと教わったのですが, そのコロニーをラテックス法でコアグラーゼ試験を行うと「陰性」を示すものもありました。黄色反応を示し, コアグラーゼ「陽性」のものを“黄色ブドウ球菌”と判断していたのですが, 黄色反応を示し, コアグラーゼ「陰性」のものはいったい何の菌なのでしょうか??? 過去の「質問箱」を拝見させていただくと, 表皮ブドウ球菌はコロニーが白色でコアグラーゼ「陰性」とのことなのですが, 卵黄加マンニットソルト培地で黄色反応を示すものは, 黄色ブドウ球菌の他にもあるのでしょうか??? ご回答, 宜しくお願いします。

【回答】
 端的にお答えします。まずは, ここで黄色ブドウ球菌はStaphylococcus aureus の, また表皮ブドウ球菌はStaphylococcus epidermidis の“和名”だとみなした前提でお答えします。黄色色素を産生するブドウ球菌を「黄色ブドウ球菌」, つまり S. aureus と言う訳ではありません。また同様に, 白色集落のブドウ球菌を「表皮ブドウ球菌」, 即ち S. epidermidis と呼称するのでもありません。黄色色素を産生していない「黄色ブドウ球菌」も, また黄色の「表皮ブドウ球菌」だってあるのです。同様に, コアグラーゼ「陽性」でも黄色ブドウ球菌(S. aureus)にならないものもありますし, 実に色々なのです。結論ですが, Staphylococcus 属菌の同定は, 限られた性状試験を実施しただけでは同定精度に無理があるのです。つまり, 黄色集落でコアグラーゼ「陰性」というだけでは, あまりにも多数の菌種が想定され, 絞り込むことは不可能です。卵黄加マンニットソルト培地で黄色反応を示すものは, ちょっと調べただけでも, S. aureus 以外に凡そ20菌種くらいあります。さらに, コアグラーゼが「陰性」という条件を加えても, 10数菌種あります。でも, 黄色色素が観察できて, ラテックス凝集反応が陽性であれば, 菌種名が S. aureus である“確率”は極めて高いと思われます。

(信州大学・川上 由行)


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