■ Streptococcus属の同定 | |
【質問】
はじめまして。衛生技術を学んでいる大学生です。 先日Streptococcus属の同定を行いました。BTB乳糖加寒天培地を用いたところ, S. pyogenesでは半透明コロニー, S. agalactiaeでは黄色のコロニーが出来ました。Streptococcus属は炭水化物を発酵して乳酸を産出するそうですが, それ以外にこの2つの菌にはどのような違いがあるのでしょうか。教えていただけたら幸いです。 【回答】
溶血性: ふたつの菌種はともに溶血連鎖球菌であり, 培養には, 通常, 血液寒天培地を使用します。S. pyogenesが血液寒天培地に発育すると集落周囲に境界明瞭で透明な溶血環 (β溶血) が形成され, S.agalactiaeはα’ (アルファ・プライム) 溶血と呼ばれる微弱で境界不明瞭な溶血環が認められます。 抗原性: 溶血連鎖球菌に存在するLancefield群特異抗原を調べることも鑑別上有用です。S. pyogenesはA群抗原, S.agalactiaeはB群抗原を保有しています。 その他の鑑別試験: S. pyogenesの鑑別に良く用いられる試験として, バシトラシン感受性試験があります。S. pyogenesはバシトラシンに感受性ですが, その他の溶血連鎖球菌の中にも感受性株が存在することがあるため, 単独での使用は危険です。PYR (L-pyrrolidonyl peptidase) 試験も鑑別上有用です。S. pyogenesはPYR試験陽性で, S.agalactiaeは陰性です。S.agalactiaeの鑑別には, 馬尿酸加水分解 (HIP) 試験が用いられます。S.agalactiaeは陽性, S. pyogenesは陰性です。またS.agalactiaeの鑑別試験としてCAMP試験もあります。羊血液寒天培地上でβ溶血毒素を産生する黄色ブドウ球菌とS.agalactiaeを交差させて培養することにより, “やじり”状の溶血環の増強が認められるというものですが, 明瞭な陽性反応が認められない菌株も存在しますので注意が必要です。 (公立玉名中央病院・永田 邦昭) |