05/02/02
■ 耐熱性菌について
【質問】
 いつもご丁寧なご回答ありがとうございます。私は食品会社に勤務し, 微生物検査の仕事に携わっております。微生物検査をしていますと, “耐熱性菌”がよく問題になります。そこでふたつ質問です。

(1) 耐熱性菌として, 芽胞をもつバチラス属菌とクロストリジウム属菌があげられますが, その他の菌種で身近な環境中に存在する耐熱性菌というものは存在するのでしょうか??? もし存在するのでしたら, なんという菌種なのでしょうか??? 特徴などもわかりましたら教えてください。

(2) 耐熱性菌を消滅させる代表的な薬剤などはあるのでしょうか??? あるのでしたら, その薬剤の特徴と消滅能力などを教えてください。

以上2点です。ご回答, 宜しくお願いします。

【回答】
 食品微生物学になじみが浅い回答者には少し難しい質問でした。 あまり参考にはならないかもしれませんが, 回答を準備しました。“耐熱性菌”は、基本的には耐熱性の芽胞を有するバチラス属とクロストリジウム属を中心とした菌でしょう。しかし, これら以外の身近な耐熱性菌として, ストレプトコッカス属の菌種 (Streptococcus thermophilus) が問題となっています。この菌は, 37℃で最も良好な発育をする菌ですが, 52℃でも発育すると記載されています。バイオフィルムを作る菌で, 食品の殺菌の際のシステムのどこかに定着して問題となることがあるようです。耐熱性菌は, 食品の種類とそれらの腐敗防止のための加熱条件 (温度, 時間など) を加味して考える必要があるようです。「Bergey’s Manual of Systematic Bacteriology」に記載されている細菌の発育至適温度, 発育温度域を調べてみて下さい。

 食品原料中の耐熱性菌を消滅させる代表的な薬剤についてですが, これまで使用されてきた薬物のヒトに対する有害作用を無視できない状況になっていると思いますが, ひとに無害で耐熱性菌を殺菌できる薬品あるいは栄養成分をできるだけ破壊せず, 耐熱菌だけを殺菌できる加熱などの物理的方法の発見と確立は, これからのこの分野の重要な問題です。

(岐阜大学・渡邉 邦友)


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