■ 「耐性」の定義について | |
【質問】
はじめて質問させて頂きます。私は化学薬剤メーカーで微生物試験を担当している者です。仕事柄「耐性菌」という言葉をよく耳にしますが, 業態, 場面によっても大部意味合いが違って使われているように感じていて, 混乱しています (微生物学的な意味合いと, 産業的な意味合いで)。具体的な「定義」みたいなものがあれば教えて下さい。例えば, 純分離した株でMICを測定した時, 通常 (同種標準株) よりかなり高い場合, 「耐性を持っている」と判断してよいのでしょうか??? 例えば標準株で15 ppmの感受性の菌が, 同種の環境分離菌で120 ppmだとしたら「耐性を持っている」のでしょうか??? それとも, 上述の段階ではまだ「“抵抗性”を持っている」だけで, 「数代継代培養して感受性測定 (MIC) しても高いままであったら“耐性”を持った」ということでしょうか??? 以上につきまして教えて頂きたくお願いいたします。 【回答】
The “resistant” category implies that isolates are not inhibited by the usually achievable concentrations of the agent with normal dosage schedule, and/or that demonstrate zone diameters that fall in the range where specific microbial resistance mechanisms (e.g., beta-lactamases) are likely, and clinical efficacy of the agent against the isolate has not been reliably shown in treatment studies. (M100-S16, Vol. 26 No. 3, p 19)
この定義では, 抗菌薬の臨床的な有効性との相関から専ら「耐性」を定義していると考えられます。しかし近年, 様々な表現型 (phenotype) としての耐性に係わる遺伝子が確定され, どちらかというとこの耐性遺伝子をもつか否かで耐性が定義される傾向にあります。 加えて, 耐性という言葉を形容詞として使うか, 名詞として使うかで, 意味が異なる場合もあります。形容詞で使う場合には, 質問者が使った“抵抗性を示す”といった柔らかいニュアンスが強く, 名詞として使う場合にははっきり耐性機序が確定している場合が多いようです。ですから「耐性 (名詞) を持っている」と表現するには, ある程度明確な耐性機序が判明している必要があります。継代培養しても高いMIC値が続くようなら, この高いMIC値は遺伝学的に安定し, 次世代に伝えることができると考えられますから, その遺伝子が判明していなくても“耐性である”と表現できるでしょう。“耐性”も“抵抗性”も, 英語ではいずれもresistantあるいはresistanceですから, 明確な区分をする必要もないのかもしれません。 (琉球大学・山根 誠久) |