06/07/26
06/08/03
■ 低力価のC型肝炎ウイルス抗体の持続
【質問】
 過去に抗体検査をして1.0未満であったのが, 輸血など一般に言われている感染の機会がないのに低力価陽性 (1.0〜2.0)をある時から長期にわたり持続している患者ですが, 感染の既往といえるのでしょうか。高脂血症と高尿酸血症の服薬をしています。肝機能の生化学検査は常に異常ありません。HCV抗体の特異性は高いと聞いていますが, いまいち納得が行きません。抗体の検査方法はMEIA法です。第二世代の検査です。低力価の偽陽性を調べた文献をあまりみないのですが, 勉強不足ですいませんが, ありましたらお教え下さい。もちろんRNA検査は陰性 (−) です。

【回答】
 継続的に低力価の陽性ですので“HCVの既往”として対処してください。できれば定期的にHCV抗体と肝機能検査を行ってください。

・HCV感染者の20〜30%は一過性の感染で, 多くの感染者は自覚症状のない不顕性感染で終息します。
・感染経路は, 母子感染と血液媒介感染 (水平感染) です。
・HCV感染の既往者の場合, カットオフ値前後で陰性, 陽性の判定を繰り返す場合があります。
・近年, Occult HCV 感染 (HCV抗体陽性, 血中RNA陰性, 肝細胞や末梢血単核細胞中のRNA陽性) の報告もあるので, 定期的な追跡検査をしてください[http://gut.bmjjournals.com/cgi/content/full/54/5/682]。

 また, 抗体の存在を確認する方法としては:

(1) RIBA-IIIによる特異抗体の存在を調べる (抗体の検出感度がスクリーニング検査より劣るため, 偽陰性の可能性もあります)。
(2) MEIA法以外の複数の検査試薬で測定する (検出できる抗体の種類, すなわちCore, NS3, NS4, NS5) や, 各抗体の検出感度が異なり, 偽陰性の可能性があります)。

〔注釈〕 
 各社, 各製品で, 固相抗原に用いているリコンビナント抗原の (1) アミノ酸の配列が異なる, (2) 抗原の大きさ (アミノ酸の数) が異なる, (3) 3〜4種類の抗原の固相体へのコーテング濃度 (割合) が異なることから, 検出できる抗体の種類と各抗体の検出感度が異なっている。

(アボットジャパン・中島 俊彦)

【質問者からのお礼】
 お忙しい中, ご回答いただきありがとうございました。成人に限らず, 小児でも遭遇することがあり, なぜ???と思うことがありました。これからも少しずつ勉強していきたいです。


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