06/12/17
■ 鶏肉からのカンピロバクター
【質問】
 私は食肉検査所で働いております■■と申します。

 先日, 鶏肉の拭き取り検査でカンピロバクターの検出を行ったところ, 菌が生えた6個の検体の内の1つが他の菌と明らかに違うものでした。考えられる菌としてあげられるものにはどんなものがあるのでしょうか??? 

 検査方法は, 検体をプレストン培地で増菌した後, mCCDA培地にて分離いたしました。いずれも42℃, 微好気培養を行い, 生えた菌をグラム染色しました。5個の検体は鏡検にて湾曲した小型桿菌が観察され, オキシダーゼ試験で「陽性」でしたのでカンピロバクター推定陽性としました。問題の菌はグラム陰性大きめの桿菌で, 湾曲はなく, 所々にとても長い桿菌もみられました。他のものよりもしっかり染まっている感じで, オキシダーゼ試験は「陰性」でした。コロニーの形も大きめで, 他のものとは違うという印象でした。

 培養条件が限られるために, 他の菌は生えにくいと指針には書かれてあったのですが, 何が生えたのかとても気になるのでどうかご意見をお聞かせください。

【回答】
 回答者も, 鶏肉からのCampylobacter分離時にmCCDA培地に増殖するグラム陰性桿菌を確認しています。しかし, 同定は行っていません。質問者の内容から推定しますと, 腸内細菌科の細菌と考えられます。mCCDA培地の選択性は, デスオキシコレート酸ナトリウムと第三世代セファロスポリンのcefoperazoneです。腸内細菌科に属する細菌は, ほとんどの菌がデスオキシコレート酸ナトリウムに耐性であり, 通性嫌気性菌ですから, 好気培養でも嫌気培養でも増殖できます。また, その中間である微好気培養でも増殖可能です。また, 42℃でも発育する菌が含まれています。Cefoperazoneは広域の抗生物質ですが, 恐らくmCCDA培地に増殖した細菌はcefoperazoneに耐性であると考えられます。所々に長い桿菌が認められたということは, 薬剤により菌の形態が変化しているとも考えられます。質問者が分離された細菌を同定するには, 市販同定キットのEB20やAPI20Eが便利だと思います。最後に, Campylobacter jejuni, C. coli, C. lariは第一世代セフェムのcephalothinに耐性であることは周知の事実であるため, セフェム系の薬剤がCampylobacter分離培地にはよく使われています。

(日水製薬・小高 秀正)

【質問者からのお礼】
 迅速に回答していただき, どうもありがとうございます。参考にさせてもらいます。ただ残念ながら検体の方は保存していないので, 今回は無理なのですが, 次の試験で同じような菌が検出された場合, APIなどで同定してみようと思います。これからもカンピロバクターの検査を行っていきますのでまた質問させてください。


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