■ 運動性とスウォーミング | |
【質問】
微生物学を学んでいる■■と申します。この前実習でプロテウス属のスウォーミングを観察したのですが, 運動性がある菌でスウォーミングする菌としない菌がいるのはなぜでしょうか。調べても詳しく出てこなかったので, 是非教えてください。お願いします。 【回答】
(1) 培養条件と運動性
B. 温度: 一般的には25_30℃が運動に適しているようです。鞭毛染色に用いる菌株の前培養では, 通常の培養温度 (35℃) より低めの培養温度を設定し, 多くの運動細胞が得られるように考慮します。 C. 培地: 運動性菌株を液体培地または半流動培地 (寒天濃度0.3_0.5%程度) で培養したら, 活発な運動がみられます。しかし, 1.5%寒天を加えた普通寒天培地に培養した場合には菌株によって運動性が異なり, さらに寒天量を増やすことで運動能力が極端に抑えられます。また, 培地に加える各種成分 (食塩, 胆汁酸, フェノール類, アルコール類, 抗菌薬など) の種類と量によっても運動性が失われます。反対に, 寒天濃度を少なくするか, 平板培地表面上を乾燥させないように水分を満たした状態で培養すると, 運動性が良好となりswarmingが起きやすくなります。従って, 同一の菌株であっても, 培地の種類や培養条件によって発育した菌集落の形状が異なってきますが, 寒天濃度1.5%程度でも盛んな運動性としてswarmingするのがProteus属であり, 他の菌種でも同一培地で培養時間を長くすると弱いswarmingが見られます。ただし, 有鞭毛運動性株でswarmingが見られない独立集落であっても, この集落から釣菌した細胞を顕微鏡で観察すると運動性が確認できますし, 低寒天濃度培地や液体培地に植え替えることで運動性が活発になります。 (2) 鞭毛
(3) スウォーミングSwarmingについて
最後に, 高性能モーターとも言われる鞭毛のメカニズムは完全には解明されていませんが, この魅力に惹かれた自動車モーターを研究しているある研究員もいるようです。新潟大学医学部細菌学教室の松山東平先生は細菌の集団連携遊走とその時空的特性の中で, Proteus mirabilis集団遊走の動態 (等間隔同心円とその恒常性, 遊走停止と内発遊走波による形態形成, 表面占拠先端部の動態, 長菌相互協力による前進など), そして動的集合形成 (P. mirabilisのswarming形成後一定期間は斑点状分布の自己集合活動を行い, 核集合体は集団状態を維持したまま移動, 融合, 成長, 分裂を行う) について詳細に解析していますので見聞されたらいかがでしょうか。 (大手前病院・山中 喜代治) |