06/05/02
■ 薬剤感受性試験について (3つの質問)
【質問】
 いつも拝見して参考にしています。前任者からの引継ぎで, 実際現在行っている薬剤感受性試験が正しいのか, 疑問に思う点が3点ほどあるので教えてください (無駄な検査はなくしていきたいと思っています)。宜しくお願いします。

(1) Campylobacter jejuniiの薬剤感受性試験ですが, スキロー培地を2枚使用して, 13薬剤のKBディスクをのせて, 腸内細菌の判定基準で阻止円を測定し, SIR判定しています。勉強会では「無駄な検査をしないように」と言われました。キャンピロバクターの理想的な薬剤感受性試験はどのような方法で行えばよいのですか。

(2) 喀痰や鼻汁の培養などでB. catarrhalisCorynebacterium属などが, また尿培養において10^4 cfu/ml程度のCorynebacterium属の薬剤感受性試験を, ミュラー・ヒントン培地に13薬剤のせて, B. catarrhalisは“グラム陰性桿菌の判定基準”で, Corynebacterium属は“ブドウ球菌の判定基準”で参考値として報告しています。「B. catarrhalisはβ・ラクタマーゼ検査のみで十分とある」とセミナーでは言われていましたが, 正しい報告方法とはどのように行えばよいのですか???・・・ちなみにMIC測定機器はありません。

(3) バクテロイデス属やクロストジウム属など, 嫌気性菌の薬剤感受性試験はブルセラ培地を2枚使用し, 13薬剤のKBディスクの阻止円を測定し, SIR判定を参考値として報告しています。現在, 嫌気用ドライパネルを検討中です。その場合はβ・ラクタマーゼの検査も追加した方がよいのですか???

【回答】

(1) Campylobacterの薬剤感受性試験は, 一般的にはMuller-Hinton agarにヒツジ脱繊維血液を5%加えた血液寒天培地を使用し, 37℃で48時間微好気培養して判定します。CLSIのMICブレイクポイントは設定されていませんので, あくまでも“参考値”として報告しています。本菌の特徴はIPM, EM, LVFXには耐性株が少ないとされていますので, 最低限これらの薬剤について試験すれば充分と思います。スキロー寒天培地はCampylobacter以外の菌の発育を抑制するための抗菌薬が添加された選択培地ですので, 薬剤感受性試験用培地としては使用しないことが原則です。

(2) Branhamella catarrahlisは, β-ラクタマーゼを測定して陽性ならばPCG, ABPCの単独治療で効果が期待できない可能性があり, β-ラクタマーゼ阻害剤との合剤を使用すればよいので, 薬剤感受性試験よりもβ-ラクタマーゼが陽性か陰性かで十分と考えます。CorynebacteriumもCLSIのMICブレイクポイントは設定されていませんので, あくまでも“参考値”として報告しています。

(3) Bacteroidesは染色体上にβ-ラクタマーゼを産生する遺伝子を持っているので, β-ラクタマーゼ試験は無意味です。Clostridiumは基本的にはβ-ラクタマーゼを測定する対象菌種に入っていませんので, 測定しなくてよいと思います。

(愛媛大学・村上 忍)


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