05/10/27
05/10/31
■ 薬剤感受性試験の判断基準
【質問】
 病院で検査技師をしています。ご多忙のところ申し訳ありませんが, 2点教えていただきたいことがあります。

(1) 不勉強でお恥ずかしいのですが, 投稿論文などで目にする“Very major error”,“Major error”,“Minor error”という表記について教えてください。細菌検査の薬剤感受性検査で, 従来までの方法 (ディスク拡散法) と自動機器での測定法 (MIC法) との比較検討を試みました。自動機器でのMIC値をSIR表記に変換して検討しました。乖離したデータの扱いについて, Very major error = “従来法が「R」, 自動機器が「S」= 偽感受性”Major error = “従来法が「S」, 自動機器が「R」= 偽耐性”, Minor error = “一方が「I」で, 他法が「SもしくはR」”というように理解してよろしいのでしょうか??? また, それぞれの割合の基準範囲などがあれば教えてください。

(2) CLSIの判定基準がない (例えばHaemophilus属のLVFXは感受性のみ記載あり, ≦2μg/ml)場合, それに該当しない場合はどのような判断が正しいのでしょうか?

基本的な質問で申し訳ありませんが、よろしくご教授お願いいたします。

【回答】
(1)“Very major error”,“Major error”,“Minor error”という言葉と定義は, 1990年5月に米国食品医薬品局 (Food and Drug Administration: FDA) の刊行した「Review criteria for assessment of antimicrobial susceptibility devices」という文書にあり, 専ら新規に開発されてきた薬剤感受性試験の試薬キットの評価を対象に適応されるものでした。厳密に言うと, 疾患管理センター (Centers for Disease Control: CDC) の選定したチャレンジ菌株について試験した結果を評価するものです。その意味からすると, 本来は試薬製造メーカーが発売にあたって準備すべき成績なのです。約10年前, 私が同じ考え方を, 従来法と新規に採用予定の方法の“成績互換性”を表す指標として用いたのが始まりです。従って, その前提には“従来法から得られる判定結果を「真の結果」として見なした時”という条件を正しく認識することが重要になります (従来法が必ずしも真の結果ではないからです)。基本的な個々の定義は, 貴君の記載に間違いありません。それと, 製品開発にあたって, 厳密にCDCのチャレンジ菌株で試験した時, 許容されるカテゴリー判定での一致率は90%を超え (それぞれの菌種, 菌群と個々の薬剤の組み合わせについて), 感性株についての“major error”の頻度は3%未満, 同じ耐性機序による耐性株についての“very major error”の頻度は1.5%未満であることが求められます。

(2) Haemophilus属のLVFXのように, “感性”のみ定義されている場合は, その菌種・菌群とその薬剤との組み合わせで, 解析に充分な数の耐性株をそろえられないことが理由です。もし, 感性の定義に合致しない“nonsusceptible”菌株に出会った時には, 菌種同定に間違いないか, 得られた薬剤感受性試験の結果には再現性があるのか, まず確認することです。しかる後, 信用できる検査施設に送付して確認してもらうことです (新たな耐性機序の発見につながるかもしれません)。このことは, CLSI/NCCLS M100-S15の120頁, コメント (General Comments) の(4) に書いてある筈ですが・・・CLSI/NCCLSの勧告文書は, 数値のみでなく, 隅から隅までよく読んでください。

(琉球大学・山根 誠久)


【質問者からのお礼】
 『薬剤感受性試験の判断基準』の質問をさせていただいた検査技師です。大変詳しく丁寧なご回答ありがとうございました。言葉の由来から教えていただきましたので, 大変よく理解出来ました。また, CLSIの勧告文書は先生のご指摘通り, 数値を重要視するものと思っていましたが, 心を入れ替え, 明日からの臨床にいかして行きます。ありがとうございました。


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