05/02/15
05/02/23
■ 薬剤感受性試験の抗菌薬の選択
【質問】
 感受性試験の抗菌薬の選択についてお尋ねします。最近, 検査室の方で希釈法に変わってから検査対象の抗菌薬が変更になっていました。例えば, MRSAの試験においてアミカシンが「S」という結果がでていたため, 主治医がアミカシンをオーダしていました。薬剤部としては, 適応でない抗菌薬は感受性の結果を表示して欲しくないのですが, 一般的に感受性試験で選択される抗菌薬はどのように選択されているのでしょうか。また, 選択の基準の分かる資料がありましたら教えていただけないでしょうか。よろしくお願いいたします。

【回答】
 薬剤感受性試験で試験対象とする薬剤の選択には多くの検査室が苦慮しています。苦慮する要因にはいろいろあります。

 まず医師は, 実際に使用する薬剤の成績を知りたい (他の薬剤の試験結果から, 自分が実際に使用する薬剤の結果を予見しない, 予見できない)。そのため, 極めて数多くの, 実際には対応できない程の薬剤を試験して欲しいという要求が検査室に突き付けられます。

 製薬メーカーは, 自分の会社が製造, 販売する薬剤を試験対象にして欲しい。試験され, その結果が医師に報告されるというだけで, その薬剤の消費量が増える宣伝効果があります。

 薬剤感受性試験, 特に希釈法を採用する検査室では, 予め薬剤が分注されたマイクロプレートを購入します。オーダー・メイドで試験する薬剤を選択できればまだよいのですが, 年間の使用量が少ないと, それでは検査試薬が高価になるため, 他の検査施設と共同で購入する, あるいは広く一般的に使われる標準品を購入する場合も多くあります。この場合には, その医療施設で使用している薬剤とは完全には一致しない状況も発生します。

 また検査室では, 個々の菌種あるいは菌株毎に試験する薬剤を任意に選択, 組み合わせることができません。ある一定の共通性の強い菌種の群に共通した薬剤の組み合わせを試験することになります (例えば, MRSAと肺炎球菌を同じ薬剤の組み合わせで試験する)。

 このような要因から, 自施設で用いていない薬剤や, 適応のない菌種についても試験されるという状況が発生してきます。しかし, 検査室と話し合いをもつことで, “条件付き報告”は可能です。検査室で試験結果は出ているけど, 敢てその結果を報告しないという運用形態です。

 また試験薬剤の選択基準としては, アメリカのClinical and Laboratory Standards Institute (CLSI) の刊行するNCCLS M100-S15 (2005年版) [http://www.clsi.org]を参考にされるとよいと思います。アメリカのFDA (食品医薬品局) の認可した抗菌薬のなかで, それぞれの菌種, 菌群で試験すべき薬剤のリストが明記されています。ただし, アメリカからの勧告ですので, 我が国の実情に合致するか否かという独自の判断が必要と考えます。
 

(琉球大学・山根 誠久)


【質問者からのお礼】
 早速にご回答をいただきまして感謝申し上げます。当院は検査が委託という点もあるのか, 実情が明確でない部分もありました。今回の先生のお話で納得することができました。今後, 選択基準, 運用を再考しなければと考えております。ありがとうございました。


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