■ 葉酸測定とLactobacillus | |
【質問】
私は○×大学工学研究科の博士後期課程1年の大学院生です。栄養成分の定量試験に関して調べていたらこのサイトを見つけました。大変参考になりそうで喜んでおります。 さて質問なのですが, 食品栄養成分のうち水溶性ビタミンといわれる葉酸は主に微生物 (lactobacillus) を用いた栄養要求試験を行っているようであり, 主に論文ではATCC 7469株が使用されています。ところが, 日本における食品分析データや血中・尿中の葉酸含量を見てみると, 別の菌株を用いて定量しています。このようなデータは菌株が異なることにより信頼性に欠けたり, 論文に投稿する際にクレームがついたりすることはないのでしょうか??? また, このような菌株を日本で入手するにはどのようにすればよいのか教えていただけたら嬉しいです。 もしかするとホームページ (微生物学) の趣旨とは若干異なるかとも思いますのでその判断に従います。失礼いたします。 【回答】
(1) 主に論文ではATCC 7469株が使用されて測定されている「葉酸」を別の菌株を用いて測定した成績の信頼性は???
というふたつの質問と理解しました。 ビタミンに限らず, 種々の成分は, その分析方法 (分析条件) によって成績に“ばらつき”が発生することはよく知られております。私が専門としている医学, 特に臨床検査学の分野領域でも然りです。国際的に, または日本として, あるいは学会として, 既に認定されている“標準測定法”が示されているのかが, その基本となります。まずは, 水溶性ビタミン「葉酸」の測定法がどうなっているのかをご自身で確認下さい。“標準測定法”が設定されているのなら, その標準法でなければクレームがつくことは明らかです。問題は, 多くの論文で示されているATCC 7469株を使用する測定法が“標準測定法”として認知されていないと仮定して, その測定法とは異なる菌株を用いて測定した数値が正当に評価されるかですが・・・測定法 (測定に用いた菌株を含めて) を明示すれば問題ないと考えるのが自然でしょう。しかし, 別の菌株を用いた成績がATCC 7469株を用いた成績と大きく食い違ったりしないことを確認する必要はあると考えます。もし, 用いる菌株によって成績が大きく食い違ったりするのでしたら, 質問者はその点についてさらに検討されて, より真値に近い成績が再現性高く得られる測定法を新たに構築されて, 本邦における“標準測定法”になるように提案していくことも必要かと思います。結論として, 標準法として認定されている測定法が存在しないのであれば, 測定法 (使用菌株) を明示することでクレームはないと思いますが, 敢て別の菌株を用いる必然性があるのか否かは私には判断できません。 また, 最後のご質問のATCC 株の入手ですが, 世界的な菌株分譲施設としてはAmerican Type Culture Collection (ATCC)[http://www.atcc.org]が最も有名で, 種々の研究目的に合致した菌株の購入が出来ます。しかし本邦では, 直接に ATCCから購入することが出来ず, 日本における ATCC Distributor に指定されている下記の機関組織を通してしか購入することが出来ません。 住商ファーマインターナショナル株式会社
以上, 簡潔にお答え申し上げました。 (信州大学・川上 由行)
[戻る] |