05/03/01
05/03/02
■ 髄膜炎菌の培養検査について
【質問】
 こんにちは。愛知県○×病院中央臨床検査科の者です。よろしくお願いします。

 当院で先日, 血液培養から髄膜炎菌が分離されました。グラム陰性球菌で同定検査キット (NH−20) と抗原検出試薬 (メニンギートキット5) でNeisseria meningitidisと同定されました。しかし, 分離培養の過程で血液寒天培地には発育がみられましたが, チョコレート寒天培地 (極東製薬 ツインプレート6)にはほとんど発育が見られないという現象がおきました。さらに検討したところ, 他社のチョコレート寒天培地 (BD社 チョコレートII寒天培地) には発育がみられました。当院では炭酸ガス濃度を10%で培養検査を行っていますが, 5%に下げたところ, どちらのチョコレート寒天培地にもコロニーの発育がみられました。この現象について, どの様に考えたらいいのでしょうか??? ややこしい質問で申し訳ありませんが, よろしくお願いいたします。

【回答】
 一般的に髄膜炎菌は, 至適温度36_37℃, 至適pH7.4_7.6, 好気性, 適度な湿度と5_10%の炭酸ガス濃度により菌発育が良好となるため, ローソク培養, 炭酸ガス培養が行われます。分離培養には, 非選択培地としてチョコレート寒天培地, GC寒天培地が, 他方選択培地としてはサイヤー・マーチン寒天培地, ニューヨ_クシティ寒天培地などが用いられ, 普通ブイヨン, 普通寒天には発育しないとされています。以上の一般的特徴を踏まえた上で, 質問の現象について考察しましたが, 現時点では理論的に説明可能な事由を明らかにすることができせん。

炭酸ガス濃度に菌発育が依存するとの事実から, 炭酸ガス濃度の増加に伴う培地pH低下が菌発育の阻害に関与するのではないかと推定し, チョコレート寒天培地 (極東製薬 ツインプレート6)のpH緩衝能を高めた条件下で菌発育の性能を検討しましたが, やはり10%炭酸ガス環境下では発育を認めませんでした。なお, 弊社で保有するNeisseria meningitidis ATCC13090, N. meningitidis ATCC35561および臨床分離N. meningitidis 4株では弊社チョコレート寒天培地 (ツインプレート6) にて炭酸ガス濃度5%, 10%のいずれの条件でも良好な菌発育を認めました。

以上のことから, 現時点ではあくまでも推定の域を出ませんが, 質問者が分離された菌株は弊社チョコレート寒天培地では炭酸ガス濃度10%環境下において何らかの菌発育阻害を受ける菌株ではないかと推測されます。

(極東製薬工業・南出 和喜夫)
【質問者からのお礼】
こんばんわ。当方の質問についてご回答頂きありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします。

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