09/01/15
■ 安全キャビネット内での火炎固定
【質問】
 初めて質問させていただきます。■■と申します。初歩的な質問で恥ずかしいですが, どうぞ宜しくお願い致します。

 私は病院で検査技師をしています。当病院には細菌検査室を設けており, グラム染色と抗酸菌のチールネルゼン染色を行っています。培養その他の細菌検査は外注しています。細菌検査室には安全キャビネットがあり, 安全キャビネット内でこの二つの染色の前処理をしています (固定まで) が, 安全キャビネットにガスバーナーを置くことができないとメーカーにいわれ, 細菌検査室内にもガスバーナーが置けず, 火炎固定が出来ない状態です。そこで様々なところで調べた結果, 染色上および安全上問題無さそうだったのでグラム染色にはメタノール固定を採用しています。しかし抗酸菌にアルコールは抵抗性があるので, チールネルゼン染色をする時に抗酸菌が陽性だったら危険なのではないかという不安があります。そこで塗沫したスライドに20%ホルマリンを1〜3分満載し, 水流した後に乾燥固定している施設があると聞き, 現在この方法を採用しています。抗酸菌陽性の検体を, ホルマリン処理後に乾燥固定して染色した標本は, 細胞の変性は多少見られたものの, 抗酸菌はきれいに染まりました。染色性には影響がないものと考えています。しかし乾燥固定できちんとスライドに固定されているか, ホルマリンで結核菌自体を変性させてしまい偽陰性の結果を返す危険がないかなど, 様々な不安があり, 標本としては良い物が出来るのはメタノール固定するほうが良いのではないかとも考えています。検査室の安全を考えてこの方法を採用しましたが, この場合どういった方法で検体の前処理を行うのがよいのでしょうか。ご教授の程, 宜しくお願いします。

【回答】
 随分神経質になっておられるように感じます。安全キャビネットを所有し, 抗酸菌染色だけを安全に実施したいという質問の内容からすると, ふたつの方法が提案できます。

(1) 抗酸菌を死滅させてから, 抗酸菌染色する方法: 5%次亜塩素酸ナトリウム処理を行ってから抗酸菌染色する方法です。

50-mlの遠心チューブに検体を入れ, 検体と等量の5%次亜塩素酸ナトリウムを加える。密栓して軽く撹拌する。室温に15分間放置する (正確に15分間を守ること, 長過ぎると菌体を破壊する)。次いで50-mlのところまで滅菌蒸留水を加え, 3,000×g, 15分間遠心する。上清を捨て, 沈渣を再浮遊して塗沫標本を作成する。この方法だと, 抗酸菌は死滅するので, 培養には用いることができない。

(2) 安全キャビネット内で検体の一部を染色標本用に固定する方法: 安全キャビネット内にガスバーナーを置くことができないという決定であれば, 次のふたつの方法を勧めます。

  • 65〜75℃のホット・プレートで少なくとも2時間 (1夜加熱も可) 加熱する。
  • 無水メタノールで1分間固定する。
なお, 固定, 特に加熱固定 (火炎固定, ホット・プレート固定) でも, 必ずしもすべての抗酸菌が死滅している訳ではないことに注意してください。

(琉球大学・山根 誠久)


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