|
【質問】
いつもこの「質問箱」で勉強させていただいています。●●株式会社品質保証部の■■と申します。主に飲料に関する品質管理の業務を行っています。
さて, 後輩からふきとり衛生調査用の寒天培地について,「寒天培地を夜のうちにオートクレーブしておき,
オートクレーブの保温機能 (50℃) を使用して, そのまま翌朝使用することは可能か」と質問を受けました。通常,
標準寒天培地とポテトデキストロース寒天培地を121℃, 15分滅菌して使用しています。121℃,
20分の滅菌も可能なことから, 50℃で15時間程度の追加加熱の影響はないと考えて「長時間の保管は好ましくはないが,
1晩保温〜翌朝使用程度なら問題ないと思う」と返答しましたが, いつまで保温保管可能かということについて,
明確な回答ができないことに気付きました。オートクレーブ後の寒天培地の溶解状態の保管期限について,
一般的な基準などがあれば教えてください。お忙しいところすみませんが, よろしくお願いします。
なお, 後輩へのコメントの際にこの「質問箱」のバックナンバーを探しましたが,
該当する質問を見つけられませんでした。もし私の見逃しでしたら非常に申し訳ありません。
【回答】
オートクレーブ後の溶解状態の寒天培地の保管期限については, 明確な基準はありません。しかし,“121℃,
20分の滅菌も可能なことから, 50℃で15時間程度の追加加熱の影響はない”という考えは誤りです。一般にオートクレーブ滅菌を終了した培地は,
50℃前後まで冷却した後, 直ぐプレートに分注するのが常識です。たとえ直ぐにプレートに分注することができないからといって,
一時的に50℃前後の恒温水槽に保管しても, 長い時間(1時間以上)恒温水槽に放置することは良いことではありません。理由は不適切な加熱は培地の質を低下させる重要な原因だからです。過熱し過ぎは発育因子の分解,
糖のカラメル化, pHの変化など, ほとんどの培地にとって有害です。長時間の加熱で作成した培地は,
微生物に対する発育促進性を激減させますので, 厳に避けるべきことです。また,“寒天培地を夜のうちにオートクレーブしておき”については,
その寒天培地の溶解, 調製はいつでしょうか??? 昼間でしょうか??? それともオートクレーブをかける前でしょうか???
この点も気になります。一般に培地を調製した後は, 放置せずにオートクレーブ滅菌することが最適です。放置するとその間に微生物が生育してしまいますので,
注意しましょう。
(テクノスルガ・ラボ 立里 臨)
【質問者からのお礼】
丁寧な回答ありがとうございました。私も, 過加熱による変質を考慮して長時間の溶解保温は好ましいことではないとは考えていましたが,
一晩くらいなら大きな問題はないかと軽く考えていました。今後は長くても1時間程度で分注,
冷却するように運用方法を定めたいと思います。なお, 培地調整後, オートクレーブ前の放置時間につきましては,
微生物の増殖を防ぐため, 調整後すぐに滅菌するようにしています。ただし, 過去にはオートクレーブの使用者が混み合って待ち時間が生じた時もありましたので,
このようなことのないように配慮したいと思います (具体的には最近, 1台オートクレーブを追加導入したことで対応できると思います)。
今後もいろいろ勉強していきたいと思いますので, よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
|戻る|
|