09/06/01
B. thuringiensisの毒素結晶
【質問】
 ●●県食品衛生協会検査センターで細菌検査を行っている■■と申します。前回, セレウス菌検査方法についていくつか質問させていただきましたが, 今回はクリスタル・トキシンについて教えていただきたいと思います。

 こちらの質問箱に以前寄せられていたB. thuringiensis のクリスタル・トキシンの染色方法[http://www.jarmam.gr.jp/situmon2/bacillus-kanbetsu.html]についての回答をもとに, B. thuringiensis NBRC 13865株を使い染色を行いました。載せられている写真と近いクリスタル・トキシンを確認することが出来たのですが, 他の菌株でも見ることが出来るか試してみたところ, B. thuringiensis ATCC 10792株では何度染色を行ってもクリスタル・トキシンを確認することが出来ませんでした (染色前の培養条件は, NBRC株・ATCC株とも同じで, 同時期に培養, 染色しました)。B. thuringiensis の中には, クリスタル・トキシンを形成しない株があるのでしょうか??? 

 何度もセレウス菌検査について質問してしまい申し訳ありませんが, ご回答お願いします。

【回答】
 Bergey’s Manual of Systematic Bacteriology Volume 2, pp. 1135にはクリスタルは研究室の培養により消失することがあると記載されています。同様なことが, Appl. Environ. Microbiol. 1995. 61: 3063〜3068にも記載されています。また, クリスタルの合成にかかわる遺伝子はプラスミドにコードされていることがわかっています (Ward ES and D J Ellar 1983: FEBS Lett. 180: 45〜49.)。このためBacillus cereusB. thuringiensis と混合培養するとクリスタルの産生能をもつBacillus cereusができます (Gonzales et al,. 1982: Proc. Nat. Acad. Sci. USA 79: 6951〜6955)。以上のことより, 何らかの原因でクリスタル合成遺伝子が欠落したか, 発現しなかったためと考えられます。ちなみに, NBRC 13865はATCC 13366と同じ菌株を意味し, この株の回復培地にはトリプチケースソイ寒天培地が記載されていますが, ATCC 10792は普通寒天培地が記載されています。

(日水製薬・小高 秀正)


戻る