08/05/16
■ 新生児への“バクトロバン鼻腔塗付”
【質問】
 総合病院の産科に勤務する助産師です。

 新生児にMRSA感染予防に, 生後直後より1日2回, 計6回“バクトロバンの鼻腔塗付”を小児科の医師の指示でやっています。感染管理委員会から再三廃止を言われており, 看護サイドも廃止したいのですが, ご意見を伺いたくメールしました。

 また, 小児科医師からの指示で, 分娩前の妊婦に鼻腔MRSAの検査を行い, 発症していない保菌者にバクトロバンの鼻腔塗付を行っています。必要でしょうか??? このような処置を行っている病院はあるのでしょうか??? よろしくお願いします。

【回答】
 新生児は無菌状態で生まれるため, 新生児を扱う施設ではMRSA保菌が容易に起こりえます。特にNICUでは新生児を集団で扱うため, MRSAは容易に広がります。そのためNICUからのMRSAの完全な排除は依然として困難で, 現時点で“求められるものではありません”。しかし, 本邦でのNICUでのMRSA保菌率は改善傾向にあり, これは各施設における標準予防策, 接触予防策および環境整備, MRSAサーベランスが確立してきたことによると考えられます。すなわち, 新生児室においてもMRSA保菌対策は“徹底した水平感染管理”によって行なうべきであり, 抗生剤であるバクトロバンの無制限な使用は制限されるべきと考えます。バクトロバンによる除菌は永続的なものではなく, また乱用により耐性菌の出現も懸念されています。

 現在当院のNICUでは徹底した水平感染対策を行なったうえで, 入院児に対して週1回の監視培養を行い, MRSA保菌者に関してのみバクトロバンの塗布を3日間行なっております。

〔参考文献〕
日本小児科学会新生児委員会の「NICU内のMRSA保菌についての見解と提言」日本小児科学会誌, 109: 1398〜1399, 2005 

(愛媛大学・田内 久道)


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