07/09/11
■ BCP加寒天培地に発育するグラム陽性球菌
【質問】
 初めて質問させていただきます。私は食品添加物製造会社で微生物検査を担当しております。

「BCP加プレートカウント培地」を使用した乳酸菌の検査について質問させて頂きます。先日, 私どもの製造工場で製造をした乳製品の酵素処理物から, 乳酸菌と思われる菌が検出されたのでグラム染色を行ったところ, グラム陽性球菌, カタラーゼ試験 陽性でした。この結果からは, 乳酸菌と判定することはできないのですが, BCP培地で乳酸菌様の発現をするこの菌はなんなのでしょうか??? コロニーは培地表面にも出ていますが, 培地の中で発現しているものもあります。個人的には“ミクロコッカス”ではないかと思うのですが, 如何なのでしょうか??? ちなみに検査方法は, 検体を10倍に希釈したものを100μl BCP培地表面にコーンラジ棒で塗り拡げて培養をしています。BCP培地とグラム染色の結果を添付いたします。回答をよろしくお願い致します。

(BCP加寒天培地上の菌集落)


(グラム染色像)

【回答】
 BCP加プレートカウント培地に発育した菌についての質問ですが, 培地がまだ残っていれば, 次のことを実施してみてください。

(1) 菌を植えていない新しいBCP加プレートカウント培地2枚を用意し, 寒天培地上の集落1個を釣菌して新しいBCP加プレートカウント培地1枚に塗抹します。また寒天内の菌集落一つを, 別の新しいBCP加プレートカウント培地1枚に塗抹します。
(2) 1夜培養後, 各培地上の集落を観察します (集落の周りの培地色の変化, 形態)。
(3) その後, 各培地上の菌集落について次の試験をしてください。

1. グラム染色・・グラム反応と形態を観察。

2. 3%KOHの反応・・3%KOH溶液1白金耳量と菌苔を半白金耳量を混ぜ, 菌苔が溶けて糸を引けば“グラム陰性菌”と判定します。糸を引かなければ“グラム陽性菌”と判定します。 

3. カタラーゼ試験

4. OF試験・・OF培地に菌を接種して培養します。培地上層部が黄色く変化したものを酸化, 培地全体が黄色く変化したものを発酵, 培地が無変化あるいは青色が強くなったものをアルカリ化と判定します。

 なお, 試験に際しては, 研究室に保存している既知の菌株を対照として試験してください (大腸菌やブドウ球菌など)。

 その結果がグラム陽性, 球菌, カタラーゼ陽性, OF試験が酸化であれば, “ミクロコッカス”とします。OF試験が発酵であれば“ブドウ球菌”とします。

 なお, コンラージ棒で塗り広げて培養した場合には, 寒天培地中に菌集落が発育してくることはありませんので, 培地調製時の無菌操作を徹底してください。
 

(栄研化学・柳沼 健史)

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