07/06/25
07/06/26
■ 微量液体希釈法でのCa++とMg++
【質問】
 はじめまして。初めて質問を寄せさせていただきます●●株式会社研究員 ■■と申します。現在, 抗菌性を持つ物質について試験しております。とても基本的なことかと思うのですが, 判断が付きませんので, 専門の方のご意見をうかがいたく思いました。よろしくお願いします。

 質問は, MIC測定で使用する培地について質問です。現在, 抗菌性を持つ物質のMICを微量液体希釈法で測定しています。Cation-adjusted Mueller Hinton Broth(CAMHB)をMueller Hinton Broth で測定しても構わないでしょうか??? 当初は(Difco)Mueller Hinton Brothで培養, 試験を行っていましたが, 開発していくにあたりNCCLS法を参考に行うことにしました。NCCLSや日本化学療法学会で標準化されている方法では, カルシウムイオン, マグネシウムイオンが添加されているCAMHBが使用されていると確認しました。しかし, 添加した二価イオンの影響で抗菌性が低下しました。文献では, 同様の物質はMHB, CAMHBでも試験されていおり, 論文レベルではMHBでも良いことはわかっています。CAMHBをMHBに代えてもNCCLS法準拠となるのでしょうか??? 二価イオンの添加は, 緑膿菌に対するアミノグリコシドおよびブドウ球菌に対するテトラサイクリンへの影響を考えてのことだと考えています。上記条件以外で, 二価イオンの添加が必要ないものなら, 今回はMHBでMICを測定しようと考えています。お忙しいとは存じますが, よろしくお願いします。

【回答】
 研究目的で抗菌活性を測定するのであれば, 敢てcation-adjusted Mueller-Hinton broth (CAMHB) を使用する必要はありません。特定の薬剤の抗菌活性を最大限に発揮させるのに, あるいは逆に薬剤耐性をより明確に表現させる目的で, 特定の, 特殊な培地を用いることはしばしばあります。CAMHBを用いない場合, NCCLS法 (現在はClinical and Laboratory Standards Institute: CLSI法) に準拠したか否かとなると, これは“表現の問題”となります。CLSI法はいろいろな検査条件から構成されます。測定薬剤の濃度域, 希釈系列の作成, 接種菌濃度, 使用した培地等々です。必要に応じて・・・「検査方法はCLSI法に準拠したが, 液体培地には△▽を用いた」と表現すれば, 培地以外のすべての検査条件はCLSI法を遵守したことが理解できます。ただCLSI法は現在, “gold standard”として広く用いられているのですから, 単にMHBを用いる場合には, どこでも, だれでも追試可能であることを保証する意味で, 用いたMHBに含まれるCa2+, Mg2+イオンの正確な濃度を提示することが求められると思います。

(琉球大学・山根 誠久)


【質問者からのお礼】
 回答の返信いただきました。ありがとうございます。丁寧に解説していただき, これまでの悩みが解消されました。今は, 二価イオンをいれずに実験を行っていました。ひとまず胸をなでおろしました。ありがとうございます。これまでも「質問箱」を参考にさせていただくことがありました。細かな疑問点が解消されるので重宝しております。また, 疑問等ありましたら, 質問を寄せさせていただきます。そのときはよろしくお願いします。


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