07/02/20
■ ブドウ球菌での“Dテスト”
【質問】
 初めて質問させていただきます。私は病院の細菌検査室で働いております。このたび, クリンダマイシン (CLDM) はCLSIよりブドウ球菌と連鎖球菌において誘導耐性があることから, “Dテスト”を行うように提案されました。現在, Dテストを始めましたが, 感覚的にブドウ球菌の場合, エリスロマイシン (EM) 耐性の時にDテストでCLDMが誘導耐性を示すことが多い気がします。溶血連鎖球菌の場合は, ペニシリンアレルギーや組織侵襲性A群連鎖球菌などを考えると, Dテストを実施する必要があるかと思いますが, ブドウ球菌にDテストをやる意義はあるのでしょうか??? (CLDMはブドウ球菌に対して使用頻度の高い抗菌薬なのですか???) ブドウ球菌の場合, EM耐性なら, DテストをやらずにCLDM耐性と報告するのは極端な発想でしょうか???

 治療に関する抗菌薬の知識が乏しいため, 検査的主観が多く入ってしまいましたが, “ブドウ球菌にDテストをやる意義”についてお考えをお聞かせ願いたいと思います。よろしくお願いいたします。

【回答】
 クリンダマイシンは, ブドウ球菌への長期投与, 特に骨髄炎 (骨の炎症) 患者の治療に使用されており, 連鎖球菌の場合と同様, ペニシリンアレルギー患者の治療に重要となります。エリスロマイシン耐性株に対して, Dテストを実施せずに, 自動的にクリンダマイシンの結果を「耐性」と報告することは好ましくないと考えられます。クリンダマイシンは, 外来患者の治療に有用な経口薬のひとつです。これを治療に使用できない場合, 治療のために入院が必要となったり, 患者が頻回に病院に通わなくてはならなくなるなど, 経済的に負担となる場合や, 副作用の強い抗菌薬を選ばざるを得ない場合が生じると思われます。

 数年前, CLSI (当時のNCCLS) において, マクロライド系およびリンコマイシン系薬剤の薬剤感受性試験について討議された際に, 医師側から“クリンダマイシンを自動的に「耐性」としない”ように強い要望がありました。菌株がクリンダマイシン「感性」である場合, 医師はクリンダマイシンをバックアップの抗菌薬として使用したいと考えています。米国では, 経験的な数字ではありますが, エリスロマイシン耐性ブドウ球菌の約半数がクリンダマイシン耐性になるとみられていますが, 日本の状況, さらには施設の状況により耐性率は異なりますので, 施設毎にクリンダマイシンの耐性率を調査することも重要と思われます。

(デイド ベーリング・朝倉 奈津子)


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