■ 病原性大腸菌の治療について | |
【質問】
いつも勉強させていただいております。検査センターの微生物部門で検査をしている者です。 先日, 東南アジアからの帰国時健診者 (建設会社関係) の糞便2検体から“病原性大腸菌”が続けて検出されました。1件は腸管出血性大腸菌および病原性大腸菌の血清型であるため, ベロ毒素産生試験を行いましたが, 毒素は非産生でした。他の1件は毒素原性大腸菌の血清型でしたが, LTおよびST検出試薬を常備していないために実施することが出来ませんでした。また, 両者とも分離平板上に95%程度の発育がありましたが, “下痢などの自覚症状はない”とのことでした。私は食品従事者でもなく, 腸管出血性大腸菌でもなく, 症状もないことから, “治療の必要はない”と考えていましたが, 上司から「純培養に近い菌の発育がある場合には, 家族などの周囲の人に感染させる可能性があると考えて, 治療を行った方が良いものだ」と言われました。 そこで質問ですが, 一般的にこのような自覚症状のない場合でも治療は必要とするものなのでしょうか??? また, 他人に感染させる確率は発育菌量 (%) に関係するものなのでしょうか??? 以上の点について教えていただきたいと思います。宜しくお願い申し上げます。 【回答】
・自覚症状のない場合でも, 治療の必要があるのか。
分離平板上で95%の発育が見られたことは, 病的な所見であり, 糞便中で優位な発育を示していると考えられます。症状がなくても再検し, 発育状況を調べて下さい。恐らく一時的は現象とは考えられます。それでも, 優性な発育を示すのであれば, 精査が必要となります。 感染させる確率は, 菌の感染力 (菌力) に依存しており, 感染力の強いものでは少数の菌でも感染しますが, 一般的には, 腸管感染は摂取菌量と依存関係にあります。 (近畿大学・古田 格)
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