■ C. difficile Toxin陽性患者の取り扱い | |
【質問】
はじめまして。私, ●●市の国立病院機構◆◆病院の■■と申します。下記のことで調査中に貴研究会のHPを見まして, ご質問させていただきます。当院で最近ICTの一員になったのですが, 相談を受けました。 C. difficileに関連した下痢症が疑われた患者さんが数名, 当院の整形外科での治療中に発生しました。抗生剤の投与中に発熱と下痢の症状が出て, 便CD toxinAが陽性だったという状況です。VCMの経口治療で症状はおさまっています。しかし主治医の先生は症状改善後もCDtoxinの検査を繰り返し, 「陰性」にならないので困っているとのこと。VCMも続けているが「陰性」にならないそうです。個室隔離も続けているそうです。どうやら, 転院予定先や施設から“CDtoxinが陽性であるとわかると転院を断られてしまう”ので, このように困っていらっしゃるようです。私なりには, 症状が改善すれば隔離の必要はなく (もちろん手洗いなどの徹底は必要でしょうが), CDtoxinの検査を繰り返す必要もなく, VCMでの治療も症状が改善すれば所定の期間で終了でよいと考えるのですが, toxinが「陰性」にならないと転院を断られるというのには確かに困ってしまいます。 Toxinが陰性にならないのは, 入院して抗生剤を使うと, ある程度“C. difficileが腸管内に定着してしまう”ということで理解してよろしいでしょうか??? また, 転院先にはなんと説明したものでしょうか??? お忙しいところ申し訳ありませんが, お知らせいただければ幸いです。長文にて失礼いたしました。 【回答】
最初のご質問の整形外科の症例についてですが, まず, バンコマイシン内服により症状がおさまっているとのことですが, 充分な治療が行われたのか確認してください。基本的にはバンコマイシン治療が完了し, 消化管症状がなければ, 個室隔離は必要なく, 転院も可能と考えます。ですが, 無症候キャリアからC. difficileが伝播していかないのか, ということになると, 下痢症例と比較すれば確率は低くはなるものの, 感染源になりえないとは言えません。特に排泄ケアを必要とする患者の場合は, 通常の“標準予防策”を徹底する必要があると考えます。個室隔離を終了する場合はICTに了承を得る, C. difficile感染症であった症例がどこの病室に移動したかを常にICTが把握しているなど, 貴院のICTでのルールを決めてもいいかもしれません。 最も気を付けなければならない点は, C. difficile感染症は再発 (再燃および再感染) しやすいということです。他の病室に移動したり, 他院に転院したりした後も, 少なくとも2ヶ月間は抗菌薬の使用に注意し, 消化管症状が認められた時には速やかに細菌学的検査を行わなければなりません。2ヶ月というのは, どこから来ているかというと, 抗菌薬使用などによって撹乱された腸内フローラが元にもどるのに2〜3ヶ月間かかるということです。従って, 転院先の病院には, 消化管症状はなくC. difficile感染症は治癒したこと(キャリアであろうとなかろうと), 再発しやすい疾患なので抗菌薬の使用には気をつけて欲しいこと, 消化管症状が再び認められた場合は速やかに細菌学的検査を行う必要があることを伝える必要があると考えます。 貴院では, 細菌学的検査として“toxin A検出”を行っているようですが,
整形外科で“集団発生疑い”とのことですので, 毒素検出と同時にC. difficile分離培養検査を併用してみてはいかがでしょうか。ご質問の,
転院を希望になっている整形外科症例においても, 一度培養検査をしてみてください。また,
今年6月よりtoxin Aとtoxin Bを同時に検出できるキットも保険適応になりましたので,
toxin A検出検査からtoxin A/toxin B検出検査に切り替えることをお勧めします。分離培養方法については下記のホームページも参照ください。
(国立感染研・加藤 はる) 【追加回答】
(琉球大学・山根 誠久) 【質問者からのお礼】
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