08/10/02, 27
■ 調理実習での微生物検査の結果
【質問】
 北海道にある某高校で勤務しているものです。いつも拝見させて頂いております。私の学校では, 食品中の微生物検査を実際に行い, 食の安全性に対して勉学させている学校です。今回, 自分達が調理実習で作成した「ほうれん草のムース」の生菌数測定をし, 実際に売られている商品の規格 (微生物規格基準) を参考にして, その数値以下になるように指導していました。ですが, 実際の数値より生菌数を抑えることができませんでした。

(1) 生菌数を測定する時には, 滅菌生理食塩水に試料を入れて普通寒天培地で37℃48時間で培養した結果:

 培養結果 400,000 CFU/gram (規格基準 100,000 CFU/gram 以下) 

(2) 大腸菌群の定性試験を行い, BGLB培地に10倍希釈液1 mLを加え, 37℃48時間で培養した結果:

 培養結果 「陽性」/gram (規格基準 「陰性」/gram)

(3) 黄色ブドウ球菌の定性試験を行い, ブドウ球菌培地に10倍希釈液 0.1 mLを加え, 37℃48時間で培養した結果:

 培養結果 “黄色ブドウ球菌以外の微生物が存在するので, 違う方法での培養が必要” (規格基準 「陰性」/0.1 gram

となりました。何か見直す点, また衛生的に行う方法でのアドバイス等がありましたらお願いします。

【回答】
 衛生的に行う方法としては, ホウレン草の根に近い部分は切り取り, 傷んでいる葉は取り除き, さらに調理する前に塩素などにつけてよく洗うことです (その後, 水道水でよく洗って下さい)。また, 細菌学的検査を行う場合はすべて滅菌したものを使用し, 無菌操作 (熟練が必要) が基本です。最終製品のみを検査するのではなく, 原材料のそれぞれについて細菌学的試験を行えば, 最終製品の微生物がどの原材料から多く持ち込まれるかが判明し, どこに注意すれば少ない菌数の製品ができるかがわかる筈です。

(1) 生菌数を測定する時には, 滅菌生理食塩水を検体に対して10倍希釈になるように加え, 試料の調製 (食品衛生検査指針を参照) を行います。それをさらに10倍段階希釈し, 各希釈液の1 mlずつを2枚の滅菌空シャーレへ接種し, 滅菌した標準寒天培地を45℃前後に保温して, その培地で“混釈培養”します。37℃で48時間培養し, 30_300個のコロニーが出現したシャーレを選び, 菌数を計測して平均して1 gram当たりの生菌数を求めます。

(2) 弁当及びそうざいの衛生規範では, “大腸菌は「陰性」”としていますが, “大腸菌群”については特に規定していません。大腸菌の検査方法は冷凍食品の規格基準に従ってください。

(3) ブドウ球菌培地には, 黄色ブドウ球菌以外の細菌も多数発育します。培養結果の判定としては, 卵黄反応の有無を基本として観察してください。

(日水製薬・小高 秀正)


【追加質問】
 ほうれん草のムースを10倍に希釈させ, BGLB培地に1 mL接種し, 24時間恒温器で培養しました。24時間後では変色もせず, ガスも産生しませんでした。ですが翌日, 48時間経つと3本中1本でガス産生が観察されました。ほうれん草をペースト状にして使用しているため, 試験管の中にはほうれん草の葉も入っています。BGLB培地は変色していませんが, ガスが産生するケースはあるのでしょうか???

【回答】
 BGLB培地では色の変化は見られません。ガスの有無だけを判定する培地です。BGLBの緑は, BTBのようなpH指示薬ではなく, ブリリアントグリーンという色素で, グラム陽性菌を抑制するために入っています。最初の回答をした後, いろいろ考えたのですが, 原材料からの汚染も考えられましたが, 調理器具 (濾す器具や洗浄し難い部分など) からの汚染も十分考えられ, この点は洋菓子などの食品メーカーも一番気を使っているところです。

(日水製薬・小高 秀正)

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