08/03/12
Clostridium difficile toxin Aのみ陽性株は・・・
【質問】
 北陸地方の一病院で微生物検査を担当しております。

 昨年, C. difficileのトキシンBも検出できる診断キットが日水製薬から発売されました。それで, トキシンAとBについて調べてみたのですが (私が無知だったと思うのですが), パターンとしてはトキシンAもBも両方陽性, トキシンAが陰性でBが陽性, そしてどちらも陰性の3つのパターンがあると書かれていました。私は以前からまったく疑いもせず, “トキシンAのみ陽性”のパターンもあると思っていました。それは間違いですか???

【回答】
 間違いかどうかは, わかりません。“Toxin A陽性toxin B陰性”という変異株も存在するかもしれません。以前, toxin A陽性toxin B陰性菌株についての報告はあったのですが, PCRでtoxin B遺伝子の検出ができなかったという報告で, 実際にその菌株が毒素を産生するのかしないのかという点の解析はされていなかったので, 本当にtoxin A陽性toxin B陰性であったのかは不明のままです。はっきりしていることは, ほとんどのClostridium difficile菌株は, toxin A陽性toxin B陽性, toxin A陰性toxin B陽性, さらにtoxin A陰性toxin B陰性に大きく分かれるということで, toxin A陽性toxin B陰性株がもし存在したとしても, 臨床分離は稀であろうということです。

 ただ, 現実に2000年頃より欧米で大流行している菌株 (BI/NAP1/027) は, それまでは少数派だった毒素遺伝子変異株 (toxin A陽性toxin B陽性菌株ですが) なので, 将来, toxin A陽性toxin B陰性の変異株が流行するという可能性もないとは言えません。

(国立感染研・加藤 はる)

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