■ Clostridium difficile症について | |
【質問】
初めてメールします。ICNとなるため現在勉強中なのですが, 質問があります。 C. difficile症についてですが, 入院期間がリスク要因となることは理解できるのですが, “抗菌薬の投与期間も要因となる”のでしょうか??? 先日, 薬剤師の先生から, 長期間投与することがいけない理由と, どこで“線引き”するのか教えて欲しいと言われたのですが, うまく答えられなかったので教えてください。抗菌薬投与期間に関係なく発症したということであれば, 期間が問題ではなく, 患者要因と誘因となりやすい抗菌薬使用によって発症していると考えていいのでしょうか??? また, 誘因となる抗菌薬の使用を規制することで, C. difficile症の発症が減少したという文献を読んだこともあるのですが, 使用しないことが一番の対策とは思うのですが, 何か他に発症させないための対策があれば教えてください。また, 一度発症した患者の症状が改善された場合, その患者は保菌者となるのでしょうか, もしくは“マイナス”となっていくのでしょうか??? その辺りの機序についても教えてください。 【回答】
2. ご指摘のように抗菌薬の適正使用は, 最も有効な感染予防の手段です。前述のように, C. difficile感染症の発症には“腸内フローラの撹乱”が大きなリスクファクターとなるので, 特に腸内フローラの主構成であるバクテロイデスなどの嫌気性菌に有効な抗菌薬の使用, 広域スペクトラムの抗菌薬の使用を避けることが重要になります。例えば, アミノグリコシド系の抗菌薬はバクテロイデスなどの嫌気性菌には効かないので, C. difficile感染症の誘因となりにくいことは理解しやすいかと思います。ご指摘のように抗菌薬をまったく使用しないことは医療上困難です。ただ単に特定の薬剤の使用を制限するのではなく, C. difficile感染症の誘因となりやすい抗菌薬が処方された場合には, その代わりになる (C. difficile感染症の誘因となりにくい) 抗菌薬についての情報を主治医に提供するなどの方法が奏効したという報告があります。抗菌薬以外では, プロトンポンプインヒビターや腸管蠕動を抑制する薬剤など, 誘因となりやすい薬剤の使用を見直すことも大切でしょう。 3. 以前から, C. difficile感染症を発症し治癒した後も, 糞便中に毒素や菌が検出されることは経験上知られていました。それらのキャリアとなった症例が, C. difficile陰性となった症例と比較して再発しやすいかといえば, 必ずしもそうではないので, 治療経過をチェックするための細菌学的検査は基本的に不必要といわれています。一度腸内フローラが撹乱されると, 完全にもとに戻るのに2〜3ヶ月かかると言われています。その間は再発 (再燃と再感染を含む) しやすいわけです。感染予防対策上では, C. difficile感染症発症既往のある症例に対しては, 特に回復後2ヶ月間は抗菌薬の使用や下痢発症に注意すること, 標準予防策をしっかり行うことが必要と思います。 (国立感染研・加藤 はる)
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