08/02/24
■ 多剤耐性緑膿菌と“コリスチン”
【質問】
 多剤耐性緑膿菌の治療に“コリスチン”という日本では使用できない抗菌薬を用いると聞いたのですが, どのようにして使用するのですか。その効果はあるのでしょうか。

【回答】
 コリスチンはポリミキシン系の抗菌薬で, グラム陰性菌の細胞膜の透過性を増加させることにより殺菌します。1960年代から1970 年代にかけて用いられましたが, 副作用の頻度が高いこと, 他に安全性が高く有効な抗菌薬が開発されたことにより使用されなくなっていました。近年, 多剤耐性緑膿菌などの多剤耐性グラム陰性桿菌感染症の治療薬として見直され, わが国でも輸入して用いている場合があります。2.5〜5 mg/kg/日を2〜3分割, 6〜12mg/kg/日を3分割などで経静脈的に投与します。多剤耐性緑膿菌や多剤耐性グラム陰性桿菌に60〜85%の有効率が報告されています。主な副作用は腎障害と神経毒性です。腎障害は急性尿細管壊死による蛋白尿, クレアチニン上昇ですが, 以前考えられたほど頻度は高くなく, 通常は可逆的で投与中止により回復するとされています。腎機能に応じて用量調節し, 注意深く経過観察すれば大きな問題にはならないようです。神経障害は, 落ち着かない, 異常知覚, 眼瞼下垂, 複視, 嚥下困難, 筋力低下, 失調, 呼吸不全などが報告されていますが, これも頻度は低いようです。

(虎の門病院・米山 彰子)


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