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【質問】
看護学生です。細菌培養に関心があり, このコーナーの様々な質問からも学習させていただいています。
手洗いなどに関する文献をみていて, コロニー数をLog, 対数変換して表記しているものを多くみます。対数として扱った方が,
データの整理や統計処理に便利と書かれているものもありましたが, 対数を用いる利点について教えてください。
【回答】
菌コロニー数を対数変換して取り扱う理由は、主にその測定原理にあります。細菌の生細胞を定量する方法は通常,
試料を10倍, 100倍, 1,000倍・・・希釈して (10倍希釈系列), それぞれの希釈された試料を一定量,
寒天培地に接種して培養し, 出て来たコロニーの数を数えます。このような方法で定量した場合には,
測定で生じる“誤差 (測定値のバラツキ)”は対数的です。例えば, 10倍から100倍に移す時の液量の0.01
mlの誤差と, 100倍から1,000倍に移す時の0.01 mlの誤差は, 液量としては同じ程度の誤差ですが,
菌コロニー数の誤差は同じではありません。また, 同じ試料を反復測定して得られたコロニー数の分布は正規分布ではなく,
対数変換して正規分布を示すように加工しなければいけません (正規分布でない場合,
平均とか, 標準偏差といった指標が使えなくなります)。
(琉球大学・山根 誠久)
【追加質問】
早々にお返事ありがとうございます。測定で生じる菌コロニー数の誤差により,
分布が正規分布しないことに対して対数変換で加工していると考えたらよいでしょうか???
測定方法ですが, 希釈の表記のない文献, フードスタンプによる培養などでも対数変換してあるのですが,
分布が正規分布しないことに対しての対数変換と考えたらよいのでしょうか???
たびたび質問をしてすいませんが, よろしくお願いします。
【回答】
菌数 (厳密には菌濃度) を定量する際に, 原試料を希釈して測定する場合には通常,
対数変換します。これは得られる数値が基本的に限界希釈法 (あるいは終末点法)
を原理としているためです。フードスタンプ法で原試料を希釈することなく, そのまま培養するような場合には,
得られたコロニー数をそのまま表示してもよいと考えます (集計された数値を統計処理する場合は別です)。
もうひとつ対数変換する理由は, 低い濃度の変化をより大きく見せたい場合です。対数変換してグラフを書くと,
大きな数値の変化は小さく, 小さな数値の変化が大きく表示されます。
(琉球大学・山根 誠久)
【質問者からのお礼】
お忙しいなか, 度々の質問にお答えくださり本当にありがとうございます。希釈のことや統計のこともこれから学習していこうと思います。先生に教えていただいたことも考えながら,
文献を読んでいきたいと思います。感染防止に関して実験的に考えていきたいと思っていますので,
また疑問がでたら「質問箱」に入れさせていただきます。この度は本当にありがとうございました。
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