09/04/14
■ コリネバクテリウムの薬剤感受性試験
【質問】
 いつもお世話になっております。199床の一般病院の検査技師です。細菌検査は外注です。

 先日関節液よりCorynebacterium spが同定されましたが, 薬剤感受性検査の対象外ということで試験ができませんでした。薬剤感受性の低い菌種だということはわかっていますが, 無菌的材料から分離された場合, 上記菌種での薬剤感受性試験の臨床での有用性についてご教授ください。

 追伸: 無理に依頼したらぶどう球菌を対象にした薬剤感受性試験の結果が参考値として出せるという回答をもらいました。それについてもご教授お願いします。

【回答】
 細菌検査は外部委託 (外注) とのこと。コリネバクテリウムが薬剤感受性試験の“対象外”という委託先からの返事は, その委託先の“検査の限界”を明示する, 契約内容を遵守するという意味からは正しい返事だと理解できます。ただ誤解しないで欲しいのは, Clinical and Laboratory Standards Institute (CLSI) に記載がない菌種, 菌群, あるいは抗菌薬については薬剤感受性試験ができないという訳ではありません。例えば, 最小発育阻止濃度 (MIC) の測定は, とにかく菌を発育させる条件さえ整えば可能なのです。実際, コリネバクテリウムを試験対象とするMIC測定の論文はいくつも公表されています。では何故, “対象外”という返事になるかと言うと, 臨床的意味が未だ明確でない, はっきりとした耐性機序の存在が明確でないなど (端的に言えばS, I, Rのカテゴリー判定が設定されていない, 設定できない) の理由から, CLSIは通常の検査室レベルでの試験を勧めていないからです。

 その意味からすると, ブドウ球菌うんぬんと言うお話は勇み足ですし, “参考値”と言う表現も逃げの誤魔化しに近いものを感じます。

〔参考文献〕
Martinez-Martinez L et al.: Antimicrobial susceptibility pattern of Corynebacterium striatum. Antimicrob Agents Chemother. 40: 2671〜2672, 1996.

(琉球大学・山根 誠久)

【質問者からのお礼】
 いつもありがとうございます。臨床に活かしていきます。

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