08/09/24
■ クロモアガーTAM培地でのサルモネラ培養
【質問】
 いつもお世話になっております。検査センターで食品の微生物検査を行っております●●と申します。サルモネラの検査についてお伺いします。

 BPWで増菌後, 今までMLCBを使用していましたが, クロモアガーTAMの方が分離能が高いと聞き, 検討しています。クロモアガーTAMでサルモネラ陽性菌は硫化水素産生菌の場合, 黒色のコロニー (透明のハロー), 硫化水素非産生菌の場合はうす紫色のコロニーで正しいでしょうか??? 他の色を示す場合もあるのでしょうか??? また, 時間を経過すると (フラン器から出して4時間ほど経過), コロニーの色が変化しているように感じました。何時間培養後に判定するのがよいのでしょうか??? 未熟な質問で恐縮ですがよろしくお願いします。

【回答】
 クロモアガーO157TAMは, クロモアガーO157上で大腸菌O157を検査する時に, サルモネラが高率で同じような紫系の色になる (発色の詳細は仏国クロモアガー社より情報が得られていませんが, サルモネラの同じような代謝酵素がこの培地の酵素基質に反応しているものと思われます) ことから, これを判別できるように鉄塩などを加えて硫化水素が産生されると黒くなるように改良したものです。そのため, 基本的には硫化水素をサルモネラが産生するとMLCBのように硫化鉄ができて黒くなりますし, 非産生の場合は本来の酵素基質培地の色である紫色になります。ただし, この培地はクロモアガーO157に比べて発育支持能を上げるために, ペプトンなどに栄養要素の高いものを選んでいますので, クロモアガーO157より大きなコロニーを作らせることができ, Shigella属菌なども発育させることができます。

 TAMに限らず酵素基質培地の場合, 目的とする細菌がその特異的な代謝酵素で培地の酵素基質を分解・異化させるなどして発色させることが基本原理ですので, こうした代謝系が変異したり, 酵素が欠落することで色が出なくなったり, あるいは異なる色になることもあります。こうした異常の頻度は, 糖の分解をpH指示薬で見るような古典的な培地に比べると格段に少ないのですが, まったくない訳ではないことを理解して下さい。

 培養時間と色の関係については, 代謝活性が十分高まった, いわゆる対数増殖期以後なら比較的安定で, 通常は35℃で24時間培養すれば十分な発色が得られると思います (ただし, 細菌が食品の加工や殺菌剤, 添加剤の影響で損傷を受けている場合は, 24時間培養後も色が薄かったりするかもしれません)。

 長時間室温に放置して置くと, 細菌が死滅して, 徐々に細胞内の色素が外に出て拡散する割合が高くなることが考えられますが, 4時間で変化することはないと思いますし, 私自身の経験では, 少なくとも1〜2日は安定した発色でした。

(関東化学・久保 亮一)

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