|
【質問】
いつもこちらのホームページを拝見させていただいております。私は品質管理業務についております■■と申します。
弊社では, 製品の分析に15改正第一追補に記載の方法で微生物限度試験を,
そして衛生試験法に記載された方法で大腸菌群の試験を実施しております。この大腸菌群の試験には,
乳糖ブイヨン法を起用しており, 乳糖ブイヨン液体培地とEMD寒天培地を使用しています。
衛生試験法には, 培地性能試験について記載されていないと記憶しています。その為弊社では,
日局方記載の菌株S. aureus(NBRS 13276), E. coli(NBRS 3972),
P.
aeruginosa(NBRS 13275), Salmonella.Abony(NBRS 100979)の4菌株を用い,
各培地に100 cfu以下植菌して発育促進特性試験を行い, 菌液希釈時に使用しているリン酸緩衝液を陰性試験と選択特性試験に用いています。
ここで問題が一つあり, S. aureusが100 cfu程度ではEMB培地に発育しません。しかし乳糖ブイヨン液体培地で増菌させた後にEMB寒天培地に植菌すると発育が見られます。そこで質問なのですが:
(1) 今現在は増菌すれば確認できますが, EMB寒天培地にS. aureusは発育するものなのか???
(2) そもそもEMB寒天培地にはどの菌株を用いて (培地性能)試験をするべきなのか???
以上です。ご意見お聞かせ願います。
【回答】
(1) 「今現在は増菌すれば確認できますが, EMB寒天培地にS. aureusは発育するものなのか?」という質問ですが,
EMB培地はメチレンブルーとエオシンYによりグラム陽性菌を抑制しています。これらの選択性はそれ程強くないため,
グラム陽性菌や酵母などの濃厚接種では発育します。抑制されるべき微生物の発育は非常に小さい
(ピンポイント) です。平板培地上で微生物の発育の有無を見る時は, コロニーの状態の観察も重要です。
(2) 「そもそもEMB寒天培地にはどの菌株を用いて (培地性能)試験をするべきなのか?」という質問ですが,
この培地はEscherichiaとEnterobacterの鑑別に開発された培地です。そのため,
日局方記載の菌株でよいと思います。元になった培地は, 1904年に日本の遠藤により報告された培地
(遠藤培地) で, これをHolt-HarrisとTeagaeが改良報告し (1916年), さらに1918年にLevineによって改良,
報告されて現在に至っています。そのため, 論文などにEMB培地について記載する時は,
オリジナルのEMB培地と区別するためにLevineのEMB培地と記載するのが正しいことになります。
(日水製薬・小高 秀正)
【質問者からのお礼】
この度はお忙しいところ, ご返答いただきまことにありがとうございます。また,
お礼を申し上げるのに遅くなり大変失礼いたしました。今後ともよろしくお願いします。
|戻る|
|