07/04/24
■ 大腸菌の有害, 無害
【質問】
 食品製造業に従事しております。

 製品検査で大腸菌 (E. coli) が検出されるとそのロットは“N・G”になります。大腸菌についての解説書などを読むと, 無害の物と病原性の物があると記されています。すると, 検査で検出される大腸菌は無害か有害か分らないのではないかと思いますが, いかがでしょうか??? 更に, 人間の体内にある物は無害なのか, 有害なのか, どうなのでしょう??? また, 検査結果を見ると, 一般生菌数と大腸菌群の数量には相関が見られるような気がしますが, どうなのでしょう??? 以上, 宜しくお願い致します。

【回答】
 食品微生物の領域で大腸菌 (群) が検査される意味は, 大腸菌 (群) が, その食品がどの程度糞便汚染を受けたものであるかを推測する“指標”となるからです。食品に含まれる大腸菌 (群) が直接, ヒトに実害を与える有害な菌であるという理由からではありません (病原性大腸菌のように, そういう場合もありますが)。大腸菌とその類縁の細菌 (腸内細菌科) はヒトや動物の腸管内に広く分布しており, これらの動物からの排泄物汚染 (混入) を簡単に検査できる方法だからです。

 人間の体内にある細菌が無害であるのか, 有害であるのかは非常に難しい問題で, 一概には論じられません。様々な細菌がヒトに有益で, これらの細菌がいないと身体に必要なものが産生できなくなります。また外からの本当に有害な細菌の侵入も防いでいると考えられています。他方で, 平素は無害な細菌が, 身体の不調に伴って有害となる, 日和見感染のような状態も起こります。

 大腸菌群は糞便汚染の指標ですから, 汚染の主たる原因が糞便によるものであれば, 一般細菌数と相関するのは当たり前のことです。汚染が別の原因 (例えばブドウ球菌の培養液を混和させた) であれば, その相関は崩れます。

(琉球大学・山根 誠久)


戻る