■ デソキシコーレイト寒天培地の調製 | |
【質問】
はじめまして。魚肉練り製品の工場で品質管理をしております■■という者です。いつも参考にさせていただいております。この度はデソキシコーレイト寒天培地の調製についてお聞きしたく, メールさせていただきました。 製造機械の拭き取り検査や製品の日持ち検査で, 栄研器材株式会社製のデソキシコーレイト寒天培地顆粒を用い, 希釈試料と混釈して大腸菌群の測定をしているのですが, 培地を加温溶解し, 50℃に保持し, いざ混釈する時に, 既に培地が固まり始め“ダマ”ができ始めてしまいます。この状態で混釈しても, 機能的には培地として問題がないように思われる (大腸菌がいる場合はちゃんとコロニーができる) のでそのまま使用していますが, シャーレに入れる際や重層する際の使い勝手は決して良くないので, 固まらずに混釈, 重層まで培地の状態を維持できないものかと考えあぐねております。 工場での培地の調製手順は: (1) 顆粒45 gに精製水1000 mlの割合で, 滅菌乾燥した耐熱ビンに加え, よく振った後, 約100℃で顆粒が完全に溶けるまで (15〜30分くらい) 湯煎をする。 (2) 顆粒が完全に溶けたらビンを振り, 50℃に設定してある恒温水槽に入れ, 15分間ほど温度が下がるのを待つ。 (3) ビンの蓋を開け, ビンの口をガスバーナーで軽く焙った後, あらかじめ希釈試料を入れてあるシャーレに, ビンから直接15 mlほど流し入れ (この時点で少し“ダマ”ができている), シャーレの培地が固まるまで待つ。その間は残りのデソキシコーレイト寒天培地は50℃の恒温水槽で保持。 (4) シャーレ内の培地が固まったら, 50℃に保持してある培地をビンから直接シャーレに5 mlほど流し込み, 重層とする (ここまで来ると“ダマ”がかなり大きくなり, 重層自体もかなり困難)。 という流れで行っています。また, 検査の目的が対外的なものではなく, あくまで社内での目安ということで行っているので, 検査の正確性よりコストに重きをおき, 本社でかつて使用していたと思われる使用期限が1年前にきれてしまった顆粒培地を使用しています。 培地に“ダマ”ができない方法として, 温度が50℃に下がる前に混釈してしまうことが思いつきますが, あまり高い温度のまま混釈すると肝心の菌が死滅してしまう気がします。 弊社では, 今年からこのような工場での自主検査を始めたため, 前任者による検査手順の引き継ぎなどもなく, 当方も特に微生物学を専門としていたわけではないため, 大学の時にかじった知識と, 知り合いの大学の微生物学の先生に一度操作方法を教えていただいたのと, 手持ちの資料で試行錯誤しながら検査を行っている次第です。 根本的な質問で申し訳ありませんが, アドバイスいただけますと幸いです。よろしくお願いいたします。 【回答】
(1) 使用法に従って秤量した粉末培地をフラスコなどの容器に入れます。 (2) 少量の精製水を加えて十分に攪拌し, 均一なペースト状または泥状にします。(3) 培地の塊 (ダマ) がなくなってから残りの精製水を入れて均一にします (寒天は静置すると容器の底に沈殿します)。 (4) 培地の溶解は, 蒸し器やオートクレーブなどを使って流通蒸気で行います。溶解の目安は, 培地を攪拌した時に, 容器壁に寒天粒子が付着して見えなくなるまで (液体状) 行います。例えば, 400 mLの培地を調製するのであれば, 最低500 mL容量の容器を使用します。溶解は十分蒸気が出てから, 火傷に注意しながら容器を蒸し器に入れ, 溶解の程度を観察します。 (5) 溶解後, 50℃の恒温水槽に入れ保冷します。この時の水の量は, できる限り培地が恒温水槽中の水に浸かるようにします。 (6) 培地分注の際は, 保冷中に寒天が容器底に沈んでいますので, 極力泡を立てないように攪拌し, シャーレに分注します。 (栄研化学・竹下 康之)
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