09/04/14
■ “Erwinia spp”について
【質問】
 私は実験動物施設で飼育管理をしている者です。

 動物の糞便をDHL寒天培地で培養し, 生えてきたコロニーをapi20Eで同定したところ Erwinia sppの可能性ありとの結果が出ました。また, 糞便だけではなく, 汚染された飲水中からも検出されました。水は3Mのペトリフィルムで検査し, api20Eで同定しました。Erwiniaについてネットで調べてみましたが腐敗菌の仲間としかわかりませんでした。Erwinia sppとは腸内細菌の一種でしょうか。また, 腸内細菌であるとしたら常在菌でしょうか。病原性はあるのでしょうか。宜しくお願いします。

【回答】
 Erwiniaは腸内細菌科に属する細菌で, Erwinia amylovoraが有名です。この細菌は植物細胞を互いに接着させているペクチンを分解する酵素を産生することから, 主に植物に対する病原菌と認識されてきました。自然環境に広く分布し, ヒトや動物に対する病原性はほとんど問題にならないとされてきました。しかし, 医療環境の変化と検査精度の向上に伴い, 次第にヒト感染症例の報告が見られるようになっています。皮膚, 眼や外耳道, 血液や骨髄血, 脳膿瘍などの報告がみられます。病原性があるかという質問ですが, 医療の変化に伴い病原性の有無も変化します。「病原性あり」と言うのは簡単ですが, 逆に「病原性なし」と断言することは不可能なことだと理解してください。

〔参考文献〕
http://www.aphis.usda.gov/brs/aphisdocs/05_09701r_pea.pdf
London R, Bottone E.: Erwinia conjunctivitis in children. Pediatrics 49: 931〜932, 1972.
Oesterle CS, Kronenberg HA, Peyman GA: Endophthalmitis caused by an Erwinia species. Arch Ophthalmol, 95: 824〜825, 1977.

(琉球大学・山根 誠久)


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