09/10/13
■ ガス壊疽の起炎菌
【質問】
 ガス壊疽の患者さんです (切開, 排膿しており, 診断は間違いありません)。おそらくは創部からの感染と思われます。抗生剤使用後ですが, 創部からKlebsiella pneumoniae, Proteus vulgarisが検出されました。糖尿病コントロール不良の方です。

 そこでご質問なのですが, 文献検索しているうちに「糖尿病患者では組織内糖濃度が上昇しており, 通常はガス産生能を有さない菌が糖分解しガス産生が起こる」という記載がありました。これは微生物学的には事実なのでしょうか???私の知る限りKlebsiellaは好気性菌だと思うのですが, ガス産生を起こすものなのでしょうか??? 他文献的にはE. coliPseudomonasもガス壊疽の起炎菌として報告されています。

 また, Proteus vulgarisという菌はガス壊疽の起炎菌になりうるのでしょうか??

 内科医で軟部組織感染について知識がありません。皮膚科医に質問しても「どーですかねぇ」というお答えしかいただけず, 悩んでおります。ご教示お願いします。

【回答】
 「ガス壊疽(gas gangrene)」は, 筋肉の壊疽と毒素により急速に進行する感染症で, 80%がClostridium perfringens, 残りもC. septicumなどのClostridium属によるものです。その他に, ガス産生性の非Clostridium性軟部組織感染, 壊死性筋膜炎があり, 好中球減少, 糖尿病, 慢性肝疾患・腎疾患など免疫不全を背景にE. coli, Klebsiella, Proteusなどが起炎菌となる場合が多いことが知られています。腸内細菌は通性嫌気性で, ブドウ糖を分解して酸とガス(CO2とH2)を産生します (戸田新細菌学 改訂第32版543頁)。ガスを産生するかどうかは菌種によって異なりますが, 大腸菌は90%以上の株が, KlebsiellaProteusも11〜89%の株がガスを産生します (戸田新細菌学 改訂第32版544頁)。ですから, この糖尿病患者から分離されたKlebsiellaProteusもガス産生性の軟部組織感染症の原因菌の可能性があると思われます。

(虎の門病院・米山 彰子)


戻る