07/09/06
07/09/10
■ グラム染色でのアルコール固定
【質問】
 初めまして。質問させていただきます。

 現在, グラム染色の固定を火炎固定でしておりますが変えたいと思っております。そこで固定液は本などでは“メタノール液”となっておりますが, エタノールでもよろしのでしょうか。また, ふたつの違いはあるのでしょうか。

 お忙しいところ申し訳ありませんが, 宜しくお願い致します。

【回答】
 メタノールは医薬用外劇物に指定され, 取り扱いが厳しいアルコール類の1種ですが, 分子量が32.04 gram/molと小さく, 組織への浸透性, 吸収, 分布が良好であり, 揮発性も強いので, 細胞変性を起こし易い火炎固定の代わりに利用されています。これに対しエタノールは, 劇物指定もなく, 扱いやすい利点はありますが, 分子量が46.1 gram/molとメタノールよりも大きく, 浸透性にやや劣り, うまく分布されにくいことや, 蛋白変性作用で細胞膜の立体構造を変化させてしまうおそれもあることから, 積極的に推奨されていないものと思われます。ただし, わずかな細胞変性の差よりも, 危険性を重視してエタノールを推奨する向きもあります。私たちも少数例ではありますが, 日常検査にて同一材料を用いたメタノール固定とエタノール固定の比較を行いましたが特別な変化はみられませんでした。しかし, 各種条件を盛り込んだ詳細な実験を試みていませんので, 即エタノールでも良いとは言えません。一般的には, 冒頭で述べた理由でメタノールが推奨されていますので, 取り扱いに気をつけてメタノールを使ったらいかがでしょうか。できれば, いろいろな材料を用いて, メタノール, エタノール, プロパノール, ブタノールなどの各種アルコール類による固定法の違いを試して, その結果を教えてください。

(大手前病院・山中 喜代治)


【質問者からのお礼】
 お忙しい中, 早々のお返事有難うございました。2薬品の固定の比較はしてみました。やはりメタノールの方が揮発性が強いとだけは感じておりましたが, このような違いがあることは知りませんでした。今後はメタノールを使用していきたいとおもいます。大変勉強になりました。今後ともご指導宜しくお願い致します。


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