10/06/07
■ グラム染色検体での遠心条件
【質問】
 グラム染色のことでお聞きしたいことがあります。

肺胞洗浄液や髄液など, 遠心が必要な検体に関してですが, 抗酸菌染色・培養とグラム染色・培養と両方の依頼がある場合3,000×Gで20分間遠心をしています。グラム染色は3,000rpmで十分なところ3,000×Gすることによって何か問題はないのでしょうか??? よろしくお願い致します。

【回答】
 “強すぎる遠心がグラム染色の判読に影響を及ぼさないのか”という質問と考えられますが, 細菌の形態については特に問題はないと思います。白血球に貪食されたり, 白血球や他の生体細胞などと混じり合って存在する菌は3,000回転 (rpm) でもそれらの細胞に付着して沈殿しますが, 液体中に浮遊する菌は3,000回転では十分に回収することができないため, 少数でも見逃してはならない結核菌などの抗酸菌を検出するために, より強い3,000×gの圧力をかけて集菌するものと考えられます。影響を受けるのは主に白血球などの生体細胞の形態であると考えられます。細胞診における遠心は, 生体細胞への影響を考慮して1,500回転 (rpm) で行いますので,3,000×gでは生体細胞成分にかなり負荷がかかることが予想されます。影響の度合いは, 白血球や上皮細胞などの新しさや脆弱性により一定ではないと考えられます。慢性の炎症ではもともと壊れかけている白血球が多いため, より形態が変化しやすいものと推測されます。加えて回収率が高まりますので, 菌数が幾分増加することも予想されます。

(公立玉名中央病院・永田 邦昭)

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