07/12/13
07/12/15
■ グラム染色の意義
【質問】
 初めまして。私は某小規模病院で臨床検査技師として勤務しております●●と申します。培養は外注, グラム染色は当院で実施しています。とても“ヘンな質問”で申し訳ないのですが・・・

「アメリカではすたれているグラム染色を何故やるのか???」 とDrに質問されました。本当にすたれてしまっているのですか??? 何故すたれているのですか??? グラム染色をすることで, 抗生剤を選択できることなどの利点があると思います (他の利点は???)。お忙しいところ申し訳ございませんが, よろしくお願いいたします。

【回答】
 グラム染色は感染症診断において最も迅速な検査であり, 非常に重要な検査です。米国だけでなく, 欧州, アジア諸国など, 全世界でその重要性は共通認識されており, 検査がされています。特に血液培養が陽性になった際にはすべての国で早急にグラム染色が行われ, その結果は抗菌剤の選択に利用されています。また, 欧州の多くの国々では, 微生物検査は検体の品質に大きく影響されるため, 感染症専門医が自分で検体を採取, グラム染色を行っているそうです。さて, 質問の“米国の状況”はというと, 以前は内科医の多くが自分でグラム染色を行っていましたが, 2004年にはその頻度が5%に減ったという報告があります。これには2つの原因が考えられていて, 1つは経験的治療 (empiric chemotherapy) が行われる際に広域の抗菌スペクトラムを持つ薬剤が使用されるようになったことがあります。そのために, グラム染色で菌を確認せずに投薬を行ってしまうようになったというものです。さらに, 1988年に“the Clinical Laboratory Improvement Amendments”という法律が施行され, グラム染色は認定を受けた技師が行わなければならなくなり, これ以降, 米国では医師がグラム染色を行わなくなったようです。このような状況から, 質問にあるそのDr.は「アメリカではすたれている」と思っておられるのでは ないでしょうか・・・日本では近年, 検査の適正化・効率化を考えるにあたり, グラム染色の重要性が再認識されています。各地域でグラム染色に関する講演が行われていますし, ネット上にも多数の情報があります。また, ある病院では医師が気軽にグラム染色を行えるように, 検査室以外に染色できる場所を設けたとの報告を聞いたこともあります。今後も決して, グラム染色がすたれることはないでしょう。

(日本ビオメリュー・横山 僚)


【質問者からのお礼】
 回答頂きましてありがとうございます。国外での状況がわかり, 大変勉強になりました。今後もグラム染色の必要性を認識し, 信念をもって実施していきたいと思います。本当にありがとうございました。


戻る