09/11/20
■ グラム染色結果の意味
【質問】
 はじめまして。先ほどバチラスのグラム染色がうまくいかない・・・といった内容を拝見させていただきました。私は品質管理部門で菌の同定をしておりますが, バチラスは陽性に染まるものと, 培養時間にかかわらず陰性にしか染まらないものとがあるようです。 その件でお尋ねします。

 菌の同定をするにあたって報告書があるのですが, その中にグラム染色結果や菌形態を記入する欄があり, コロニーと細胞の写真も添付します。その際グラム陰性に染まったものの, 細胞はバチラス様であり芽胞もあったため, バチラス属と同定しました。アピやバイテックを用いての種までの同定は行いませんでした。グラム染色は陰性だった為, そのまま陰性と報告書に記入したところ, 陽性菌なのに陰性と書くなら追記が必要と指摘をうけました。私の考えでは, 菌の同定に至るまでの鑑別試験の一つであり, 陰性菌でも陽性に, 陽性菌でも陰性に染まるパターンは多々あると思うのです。バチラスが大きくまとめて陽性菌と分類されていることに拘る必要性があるのでしょうか??? アドバイスよろしくお願いします。

【回答】
 質問者の意見も, ひとつの意見としては理解できます。ひとつの菌集落から釣菌した標本でも, 必ずしも一様なグラム染色像にならないことはしばしば経験することです。しかし, バチルス属と報告書に同定菌種名を記載し、さらにグラム陰性とのみ併記したことには問題があると感じます。検査室内の, あるいは担当者の作業書にそのように記載することは, あるがままの真実を記録しておくという意味で大切なことであり, 将来きっと役立つことでしょう。ただ, し報告書となると, 第三者への最終的な, 正式なメッセージです。質問者が直接関与しないヒトあるいは組織ともつながるものです。細菌学を多少知るものなら, “グラム陰性で, 同定がバチルス属とは, この結果は信用できるのか”という疑問を当然ながらもつと思います。このような場合, 質問者が, 何故, バチルス属という同定に至ったのか, “追記する”ことが求められると思います。グラム染色はこの場合, それ自体を報告するのが目的なのではなく, 同定に至るためのひとつの手段に過ぎないと考えられるのですから。

(琉球大学・山根 誠久)


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