|
【質問】
グラム染色鏡検の際の菌量の基準についてお尋ねします。私は検査技師4名の細菌検査室に勤務しております。
先日, 鏡検のマニュアルを作成する機会がありました。当施設では, 塗抹検査の菌量を,
少数, 1+, 2+, 3+で表記していますが, 各自菌数の基準が異なっていました。成書をみても,
細胞数などの記載はありますが, 菌量については明確に書いていないようでした。1,000倍で鏡検した場合,
1視野あたり何個というような数字をお示しいただけたら幸いです。
【回答】
アメリカの全米微生物学会の刊行するハンドブック (Clinical Microbiology
Procedures Handbook) には下記のように菌量を表記するとあります (これは義務ではなく,
一般的な方法として・・・“べき”ではなく, このようにする施設が多いの意味)。なお,
この表記基準は, 細胞の量の表記にもしばしば用いられます。
(1) 数字での表記
1+: 油浸検鏡 (すなわち1,000倍拡大) で1視野に1個未満
2+: 油浸検鏡で1視野に1個
3+: 油浸検鏡で1視野に2〜10個
4+: 油浸検鏡で1視野に10を超える多数
(2) 言葉での表記
Rare (稀): 油浸検鏡で1視野に1個未満
Few (少し): 油浸検鏡で1視野に1〜5個
Moderate (中等): 油浸検鏡で1視野に5〜10個
Many (多数): 油浸検鏡で1視野に10個を超える多数
表記の問題は, 検査室とその施設の臨床医を結ぶコミュニケーションの問題を発生させます。両者が共通の認識をもつことが第一です。上記の表記方法も一般的な表現として用いられている
(施設によっては異なる表記方法を採用している場合もある) と理解してください。
(琉球大学・山根 誠久)
【追加質問】
今回はお忙しい中, ご回答いただき有難うございました。ただ, この基準を用いると,
材料が喀痰の場合, ほとんどの検体でGPC 4+, GPR 4+ ・・・というような結果になると思われますが,
それでよろしいでしょうか??? 申し訳ございませんが, 重ねて質問させていただきます。
【回答】
“よろしいか否か”を決めるのは, その施設の自己決定です。標準化, 規格化,
言ってみれば共通の基準を決めるのは, 相互に誤解のないようにするためです。では,
誰と誰の“相互”かというと, 基本は検査室とその施設で診療に従事する医師の“相互”が原点です。その両者によろしければよろしい,
よろしくなければダメだということです。さらに拡大して, 貴方の検査結果が近隣の医療施設に廻される
(患者が検査結果と共に紹介される) ような場合には, 紹介先の施設との共通の表現が必要となり,
最終的に国際的な学術雑誌に投稿する, 国際学会で発表する場合には, 全世界の関係者との共通の表現が求められることになります。
私には, すべての喀痰検体でGPC 4+, GPR 4+となっても, それが一定の,
再現性ある施設内基準で報告されていれば, それでもよいと考えるのですが・・・なにか支障がありますか???
予想されるのは, 医師のオーバー・リアクション (過剰反応) ですが, 起炎菌云々という問題は,
今回の質問とは別の次元の問題だと考えます。
(琉球大学・山根 誠久)
【質問者からのお礼】
院内で認められた施設内基準が他施設とも共通であれば望ましいと理解いたしました。ご教示いただいた基準を用いている施設が多いということであれば,
あらためてこの基準を当施設の報告基準とする旨, 臨床に明示して理解を求めることにしたいと思います。この度は,
お忙しい中, 早々にご回答いただき有難うございました。大変勉強になりました。今後とも宜しくご指導お願い致します。
|戻る|
|