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【質問】
いつも, このサイトで勉強させて頂いております。私は現在, ●●大学微生物学研究室で研究生をしております■■と申します。グラム染色について質問があります。
学校の先生か誰かに以前,「グラム陰性菌は、塗抹した辺縁部に多く集まる傾向がある」ということを言われた記憶があります。実際,
グラム染色後に顕鏡すると, 菌を塗抹した辺縁部にグラム陰性桿菌が多数集中して見られることが多々あります
(この時は, 黄色ブドウ球菌と大腸菌の2菌種のグラム染色をしました)。他のグラム陰性球菌や陽性桿菌で調べていないため,
確証できておりません。この現象というのは, ハンドリングによる“偶然”なのか,
それとも陰性菌の持つ何か特徴があるのでしょうか??? 宜しくお願い致します。
【回答】
「グラム陰性菌は塗抹した辺縁部に多く集まる傾向がある」という質問ですが,
これは寒天培地などに発育した菌を水 (生食水など) に溶かして塗抹したときのことでしょうか???
臨床検体では, 下痢便中のキャンピロバクターが塗抹の辺縁部に抜け出してきているように見えることがあります。これはおそらく,
他の菌よりも運動性の活発なキャンピロバクターが, 乾燥寸前まで動き回り, 一番外側の乾燥しつつある領域に侵入して帰られなくなった状態ではないかと推測されます。この現象については,
運動性の強さが関与しているように想像されます。キャンピロバクターは菌体の一端または両端に一本の極鞭毛を持つため,
周毛性の大腸菌などよりも活発に運動すると言われています。確かに鞭毛を持つ頻度はグラム陰性菌のほうが陽性菌よりも高く,
運動性のある菌は辺縁部に集まりやすいという考え方も出来なくはありませんが,
質問のように黄色ブドウ球菌と大腸菌を生食水などに浮遊させて塗抹しても, 極端に大腸菌だけが辺縁部に集まるという傾向はあまりないように思います。ただ菌浮遊液をオベクトグラスに塗抹した際,
乾燥時に辺縁部で菌が濃縮されることがあります。これは陽性菌, 陰性菌に限らず,
すべての菌について起こる現象ですが, 特にグラム陰性菌は濃度の薄いところでは染まりにくく,
見落とされがちな性質があり, 辺縁部の濃縮された部分でのみはっきりと観察されるため,
結果的に辺縁に多く集まったように見える可能性はあります。これに対しグラム陽性菌は濃度の薄い部分でも比較的はっきりと染色されるため,
中心部と辺縁部であまり差がないように見えるのかもしれません。
いずれにしても, 菌の種類や状態, 培養条件あるいは塗抹の仕方などにより見え方は一定ではないと思います。自分でいくつかの菌を用いて実験し,
確認してみてはいかがでしょうか。
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