08/01/17
■ 平板培地での血液培養
【質問】
 無所属の臨床検査技師です。友人が働く研究所で, 血液培養をするのに, カルチャーボトルが高価なため, 平板培地で出来ないのか質問されました。研究所なので, 用いる血液も室温保存24時間以内のものです。私なりに調べてみると, いれば生えるとおっしゃる細菌の先生と, 増菌しなければ無理だという現場の意見があり, 判断に困っております。平板培地で血液検査は可能なのか不可能なのか。また可能であれば, どのような培養の仕方が最善の方法なのか。不可能な場合, なぜ不可能なのか, 是非ともご意見をお聞かせください。

【回答】
 やろうと思えば, 必要であれば, 平板培地で血液培養は可能です。しかし, 当然のことながら, その限界もあります。随分昔, 腸チフス華やかな時代には, 血液培養を“混釈培養法”で行っていました。血液と液状の熱い寒天培地を混和して固め, 培養する方法です。細菌 (チフス菌) の数が菌集落の計測で定量でき, 治療経過を観察するのに有効とされていました。また現在でも, 欧米諸国では, 好気を好む血液中の酵母真菌の検出を目的に, lysis-filtration法, lysis-centrifugation法が応用されています。血液を予め溶血させ, フィルターで捕捉する, あるいは遠心で濃縮してから, 寒天培地に接種, 培養する方法です。さらに, かつてある日本のメーカーが下記のような検査方法を開発したことがあります。まず, 血液をサポニンで溶血させ, ニトロセルロース膜を張り, その下に予め乾燥培地を入れた容器に注ぎ, そのまま培養する。菌集落が透明なニトロセルロース膜の上に形成されます。評価成績は定量的で, 分離成績も良好だったのですが, 結局“市場性なし”と判断され, 製品化されませんでした。結局, 菌検出可能な最小菌濃度 (検査できる最大血液量), 菌集落を形成した培地の性状 (培地の特性, 透明性など), 目的とする菌種と網羅できる菌種の範囲, 労働効率などの要因をよく考慮して適否を決定する必要があると思います。

(琉球大学・山根 誠久)


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