09/01/22
■ 非結核性抗酸菌へのlevofloxacinの有用性
【質問】
 ●●県の検査センターで抗酸菌検査を担当している■■と申します。非結核性抗酸菌症の治療でlevofloxacin (LVFX) の有用性について教えて頂けますか。

 今, 私の施設では結核・非結核に関わらず, ビットスペクトルSR(極東製薬工業)を使用して感受性検査をしています。プレート上では非結核性の菌の大部分がLVFXで「R」なのですが, 稀に「S」の場合があります。この場合, ドクターにはLVFXの感受性は「S」で報告してもよいのでしょうか??? 本来なら非結核性の専用プレートを使用すべきなのですが・・・。M. avium, M. intracellulare , M. kansasii, M. abscessus, M. fortuitum, M. chelonaeなどの菌種でLVFXを投与して有効な菌種があれば教えてください。

【回答】
 まず, 考えてください。非結核性抗酸菌の感染症を単一の薬剤で治療することはあり得ません。従ってこの場合, 単一の薬剤が臨床的に有効か, あるいは無効かを論ずることはほとんど不可能なのです。では検査する側から臨床に提供できる情報はなにかというと, 分離された菌株が, 数多くの同一の菌種の菌株群と比較して, 抗菌薬が設定された試験条件でより効く菌株なのか, 効かない菌株なのかというものだと思います。

 非結核性抗酸菌の菌種毎で, LVFXに差があるかということでしたら, BrothMIC NTMで測定されたMIC値 (MIC50%) で評価すると, ほとんどの菌種で0.5〜2.0μg/ml, 例外はM. abscessusで4.0〜8.0μg/mlにあります。

 蛇足ですが, 非結核性抗酸菌をビットスペクトルSRで検査すると, 多くの場合, 「耐性」に偏った結果がでます。

 また, 検査センターで検査を受注されているようですが, 顧客である医師あるいは医療機関に対して, 検査の方法, 判定の方法, 精度管理の方法, 検査の限界などを, 受注前に“予め”提示しておくことが必要だと思います。私には, (1) ビットスペクトルSRで, (2) 非結核性抗酸菌を対象に, (3) LVFXを「R」あるいは「S」に判定する (判定できる) 基準をどのように定められたのか理解できません。自施設で定めたのでしょうか, 試薬製造元が提供したのでしょうか, そのように定めた根拠は科学的に明確なのでしょうか・・・

〔参考文献〕
山根誠久, 他: Middlebrook合成培地での抗酸菌薬剤感受性試験 (第4報): Nontuberculous Mycobacteriaを試験対象とする微量液体希釈法, BrothMIC NTMの開発評価. 臨床病理 50: 381-391, 2002.

(琉球大学・山根 誠久) 


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