■ 遺伝子増幅とクリーンベンチのファン | |
【質問】
遺伝子増幅検査を実施する上でのクリーンベンチの使用法について質問させていただきます。 遺伝子増幅検査を実施する際の, “試薬の調製やサンプルの添加”を行うクリーンベンチについて, 作業する際に“ファンをオンにすべきか, オフにすべきか”迷っています。というのは, クリーンベンチ内には外気をフィルターに通してクリーンなエアを流入させていますが, 以前何かの資料で「フィルターでDNaseやRnase, (夾雑する) 遺伝子を確実にキャッチ出来るかどうか不明」と書いてあるのを見たことがあり, ファンを (オンに) つけることで, それらの気流によるコンタミが起こるのではないか??? ファンを (オフにして) 止めて, ある程度隔離されたBoxとしてクリーンベンチを使用した方がコンタミのリスクが減るのではないか??? と疑問が生じています。あまりこのことについて書かれている文献が見あたらないので, 特に気にする必要がないのかもしれないとも思っており, 実際作業する上ではどちらがベストなのかわかりません。お忙しいところ恐縮ですが, ご教示お願いいたします。 【回答】
クリーンベンチのファンの「オンまたはオフ」については, 基本的にどちらでもかまわないと思われます。定期的なメンテナンスが十分に行なわれているクリーンベンチでは, ファンを「オン」にしても, フィルターを通過する混入物 (DNase, RNase, 不特定DNAなど)は非常に微量であると考えられ, 作業そのものを丁寧に行なえば, PCR増幅に大きな問題を生じることはありません。ただし, クリーンベンチ内は「無菌」ではなく, また, クリーンベンチ内での汚染を軽減するために, 70%エタノールなどで拭くなどの使用前の作業環境の清掃は当然必要となります。 仮に, メンテナンスが不十分である場合には, フィルターに付着した微生物などがエアーによりクリーンベンチ内に舞うことから, 落下菌が混入することでPCR増幅に大きな支障を与えると考えられます。この場合には, ファンは「オフ」にし, 作業環境内の清掃を行なった上で作業されることを勧めます。 PCRにおけるコンタミネーションの原因にはいくつかあり, すべてを挙げることは不可能ですが, 仮に微生物を対象としているのであれば,「落下菌」による汚染や, チューブなどが静電気を帯びていることによる「不特定DNAの付着」などがあります。しかし, これらについては完全に防ぐ方法はありません。作業環境に沿ったルールを作り, 行なう実験対象を十分に理解した上で作業することを勧めます。また, 作業環境を整えても, 手指, 実験器具からの混入なども十分に考えられますので, 作業そのものを丁寧に行なうことがコンタミネーションを防ぐ上で最も重要と考えられます。 (テクノスルガ・ラボ・半田 豊) |