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【質問】
いつも拝見させていただいております。先日咽頭ぬぐい液のグラム染色を行ったところ,
見慣れない所見でしたので, ご意見を伺いたくメールをいたしました。
患者は20歳の女性で, “のどの痛み”を主訴に受診しています。数種類の細菌とともに,
“グラム陰性のらせん状の物体”が多数見られました。この物体が何なのか, 私どもでは判断がつきませんでした。画像を添付しますので,
よろしくお願いいたします。
【回答】
質問のグラム染色写真は, ワンサン・アンギーナ (Vincent’s angina)
において認められる所見と考えられます。本疾患はプラウ・ワンサンアンギーナ
(Plaut-Vincent’s angina) とも呼ばれ, 口腔内に常在する紡錘状桿菌とスピロヘータ(Borrelia
vincentii) が過剰に増殖することによって惹き起こされる偽膜性の口峡炎
(angina) で, 15_30歳の男性に多いとされています。質問の“グラム陰性のらせん状の物体”は口内スピロヘータと推測され,
共存する両端がとがった細長い紡錘形のグラム染色陰性桿菌は偏性嫌気性菌であるFusobacterium属と考えられます。両菌の混合感染によって口腔や咽頭に潰瘍性の病変を形成するため,
フゾスピロヘータ症 (Fusospirochetal disease) と表現されることもあります。この口内スピロヘータは健常人の口腔内にも多く常在しますが,
抗菌薬には感受性が高く, ペニシリンによって容易に治癒するとされています。抗菌薬未投与の患者の咽頭粘液や唾液のグラム染色で,
他の常在細菌と共に少数認められることもありますが, 写真の症例は明らかに過剰増殖した所見だと考えられます。
(公立玉名中央病院・永田 邦昭)
【質問者からのお礼】
お忙しい中, 私どもの質問に回答いただきありがとうございます。とても詳しく分かりやすい説明で,
非常に参考になりました。ありがとうございました。
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