08/01/10
08/01/18
■ ISO11737-1バイオバーデン評価における菌保管
【質問】
 医療機器の滅菌工程を外部に委託するにあたり, ISO11737-1に従い, 製造環境のバイオバーデン評価を行い, 滅菌条件を確定します。ISO11737-1中のA.5.2.1.2「製品への接種法」に, 芽胞形成グラム陽性菌の芽胞を用いて試験を行うことが記されており, この試験を外部業者に依頼したところ, Bacillus subtilis を芽胞形成培地で増殖させ, 集菌後, 80℃×30 min保管したモノを, 滅菌RO水を用いて冷蔵保管して供試菌として3年間を使用期限とし, ストック供試菌液としているとのことでした。また, 菌数確認はストック供試菌液作成時に測定した値を用いており, 試験毎に菌数測定は行っていないとの説明でした。以上のことに関して疑問を以下に示させて頂きます。初歩的な質問で恐縮ですが, 宜しくお願い致します。

(1) Bacillus subtilis保管条件として, 芽胞形成されていれば, 浸透圧を考慮しない保管方法であっても妥当なのでしょうか???

(2) 保管期間として3年を設定しているが, “根拠はない”との説明を受けましたが, 妥当でしょうか???

 また, 本来保管方法の違いに関係なく, 供試前には芽胞菌数の確認を行うべきと考えますが, 意味のないことでしょうか???

お忙しい中, お手を煩わせますが, 宜しくご指導を頂けます様お願い申し上げます。

【回答】
(1) の浸透圧を考慮しないことが妥当かどうかは判然としませんが, 芽胞が濃い濃度で存在すれば, お互いの存在でさほど浸透圧による直接の障害はないと考えられます。

(2) ストック供試菌液の保管期間3年の“根拠はない”という意見には疑問を感じます。外部業者の品質管理や品質保証にかかわる問題です。外部業者は, ストック供試菌液の3年間の保証をするために, 経時変化試験を実施し, 受託した試験の品質を保証する義務があると考えます。確認されることを勧めます。

最後に, 質問者が書かれているように「供試前には芽胞菌数の確認を行うべきと考えます」という意見に同意します。補足として, ISO11737-1の質問者が関係している部分を抜粋します。

付録BのB.2.2.2.の注21に, 「接種法に選択される微生物は、乾燥に耐えることが重要であり、従って、好気性菌の芽胞が一般に用いられる。Bacillus subtilis var nigerがこの目的にかなっているので、よく用いられる」と記載されています。

また、A.5.2.1.2には,「接種時の生菌数を明らかにすること」「製品に菌を接種するときは、微生物接種が被膜形成、懸濁液の吸着、クラッピング及び接種菌数の変動といった限界のあることを考慮すること」と書かれています。

(日水製薬・小高 秀正)


【質問者からのお礼】
 お世話になっております。お忙しい中,「ISO11737-1バイオバーデン評価における菌保管」に対するご回答を頂き, 誠にありがとう御座いました。供試菌の保管方法に関して, 施設の試験管理責任者に確認いたしましたが, 供試菌保管方法は企業ノウハウとの回答以外は頂くことが出来ませんでした。後の祭りですが, コントラクト・ラボ (契約検査施設) の選定は慎重に行う必要を痛感しました。


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