■ “かびの胞子”の構造を知りたい | |
【質問】
(1) 現在, カビの胞子を対象に殺菌実験を行っているのですが, 殺菌効果を検証する上で, 胞子の構造の理解が不可欠であることがわかりました。そこで論文や図鑑・解説書等で構造を調べましたところ, 菌糸の細胞,分生子,細菌の芽胞の構造は見つけることはできたのですが, “カビの胞子の構造”が書いてあるものを見つけることができませんでした。細菌の芽胞に似たような構造になっているのでしょうか??? (2) カビは細胞壁が厚く, メチレンブルーやCTCなどの一般的な染色剤が透過しにくいと聞いたのですが, 内部の構造を観察するよい方法はないでしょうか??? 臨床微生物迅速診断研究会の「質問箱」を見て, もしかしたらアドバイスいただけるのではと考え, 門外漢なのですが, よくわからずに送信させていただきました。 【回答】
〔参考文献〕
Wester J and Weber RWS: Introduction to Fungi, 3rd ed. Cambridge University Press, UK, 2007. (2) カビの光学顕微鏡観察用のプレパラート作製には用途に応じて様々なマウント液が用いられています (ラクトフェノール液, 乳酸液, シェアー液, KOHなど)。さらに, 胞子や菌糸などの細胞の内部構造を観察するには, これらのマウント液には用途に応じて様々な色素を添加して用います。この色素は酸性色素, 塩基性色素, 直接染料などのグループに分類されます。酸性色素は主に細胞質の染色に用いられ, フロキシン (明るいピンク色に染色される), 酸性フクシン, アニリンブルーなどがあります。塩基性色素は主に核の染色に用いられ, サフラニン液などがあります。直接染料は媒染剤を用いなくても, セルロースなどを染色できる色素で, コンゴーレッドやトリパンブルーなどが知られています。これらマウント液と色素を組み合せた代表的なマウント液として, ラクト_フクシン (酸性フクシン 0.1 gram, 乳酸 100 ml), ラクトフェノール・コットンブルー液 (結晶フェノール 20 gram, 乳酸 20 gram, グリセリン 40 gram, コットンブルー 0.05_1 gram, 蒸留水 20 ml) などが広く用いられています。また, 暗色系の色の濃い胞子などの内部構造を観察する際は, 次亜塩素酸ナトリウム液 (またはキッチンハイターなどでも代用可) に浸して, 色を薄くすることで観察がし易くなります。さらに内部構造を詳細に観察したい場合は, 超薄切片を作製して透過型電子顕微鏡による観察を勧めます。 〔参考文献〕
松島恵介: 実験室における菌類の形態観察と記録法: 菌類の写真、線画およびその画像処理1. 日本菌学会報 42: 112〜119, 2001. (テクノスルガ・ラボ 喜友名 朝彦)
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