07/05/01
■ 海外食品工場での腸炎ビブリオとコレラ検査
【質問】
 こんにちは。いつも参考にさせて頂いております。食品会社で品質管理を担当しております。先日, 海外工場に視察に行き, 現地で実施の微生物検査の作業手順を確認いたしましたが, 本邦での方法と異なる点がいくつかあり, 教えて頂きたく, ご質問させて頂きました。

(1) 大腸菌の検査方法についてですが, フローでは, 検体25 ramgをTryptone Sel 225 ml加えて希釈し, BGLB培地に接種し, 44.5℃±0.2℃で48時間±2時間培養し, ガスの発生を確認するという手順でした。この方法は実際に用いられる方法なのでしょうか??? これ以降の工程は, EMB培地に接種など, 私が認識している手順と変わりありませんでした。

(2) 腸炎ビブリオとコレラの検査の性状試験ですが,
腸炎ビブリオは, KIA: K/A, 硫化水素 (−), ガス (−), Soft agar: 運動性 (+), オキシダーゼ (+), グラム陰性, 食塩耐用性 (0, 3, 6, 8, 10%): 3, 6, 8% (+)
コレラは: KIA: K/A, 硫化水素 (−), ガス (−), Soft agar: 運動性 (+), オキシダーゼ (+), グラム陰性, 食塩耐用性 (0, 3, 6, 8, 10%): 0, 3% (+)

 この確認内容で, 腸炎ビブリオ・コレラが正確に判定されるでしょうか??? 
 以上, 宜しくお願い致します。

【回答】
(1) 大腸菌検査: 日本の「食品衛生検査指針」では, 試料25 gramと滅菌希釈液225 mlで30秒間均質化したものを試料原液として, 試料原液10 ml, 1 mlおよびその10倍希釈液, 各々1 mlずつを5本または3本ずつのEC発酵管に接種して, 44.5±0.2℃で24±2時間培養し, ガス発生が認められた発酵管からEMB寒天培地へ塗抹するとなっています。FDAのBAMでは, 50 gramの試料へ450 ml の 滅菌したButterfield’s phosphate-buffered waterを加えてブレンダーで2分間均質にします。3段階の濃度になるように試料を用意し, 3本ずつのLauryl tryptose brothへ接種し, 35℃で48±2時間培養します。ガス産生が認められた試験管から1白金耳をEC発酵管へ接種し, 45.5℃で48±2時間培養します。ガス産生を認めた試験管からL-EMB寒天培地へ接種します。最終確認は日米同じですが, IMVIC試験とグラム染色を実施します。

(2) 腸炎ビブリオとコレラの検査の性状試験: KIA(斜面 黄色/高層 赤, 硫化水素非産生, ガス非産生), 運動性 (+), オキシダーゼ (+), グラム陰性は両方同じです。NaCl (0, 3, 6, 8, 10%) 存在下での発育試験において, コレラでは0_3%まで発育可能ですが, 腸炎ビブリオではNaClが0%の時は発育しませんが, 3〜8%存在下で発育することから, 6%や8%の発育を見れば両者の鑑別はつきます。また, コレラはsucroseやL-ornithineを利用しますが, 腸炎ビブリオは利用しません。Sucroseが組成に入っているTCBS寒天培地では, コレラは黄色, 腸炎ビブリオは緑のコロニーを形成します。同定キットとしては, EB-20やAPI 20Eが使えます。

(日水製薬・小高 秀正)

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