08/02/29
■海外と日本の大腸菌群検査法について
【質問】
 ●●株式会社の■■と申します。海外と日本の大腸菌群検査方法について以下の通りご質問をいたします。お忙しいところ誠に恐縮でございますが, 何卒宜しくお願いいたします。

(当該質問に至った背景)
 食品製造業におきまして商品開発を行っております。海外からある乾燥野菜を輸入するにあたり, 大腸菌群についてのある約束事 (例えば「大腸菌群 陰性/3.33 g」という約束事) を海外メーカーと当社でとりかわそうと考えております。私が経験した範囲での海外メーカーでは, ほとんどの会社が “BAM ”を元に, 推定試験: LST培地→確定試験: BGLB培地で行っております。一方, 「食品衛生検査指針 (ブイヨン培地による方法)」 では, 推定試験: BGLB培地→確定試験: EMB培地となっております。これらの方法の違いが, 当社取引商品の検査結果に及ぼす影響については, 自身で同サンプルをそれぞれの培地で検査するなどをして検討するつもりでおります。

〔質問1〕
 これらの培地 (LST培地とBGLB培地) 組成の違いから想定される性能の違いにつきまして知見がございましたら, 是非お聞かせ願えますでしょうか???

〔質問2〕
 大腸菌群測定方法 (公定法) が, 今回のように“BAM”と「食品衛生検査指針」で異なる理由は, それぞれの歴史的背景の違いによるものと推察します。この部分を勉強するにあたり, ご推薦いただける参考書等 (日本の歴史背景だけでも充分でございます) がございましたら是非お教え願えないでしょうか???

 海外メーカーに「食品衛生検査指針」で指定された方法 (ブイヨン培地による方法) で検査することを指示するにあたっても, この文化と歴史の違いを充分に知っておくことは極めて重要であると考え, 質問させていただきました。

【回答】
〔回答1〕LST培地はラウリル硫酸ナトリウムがグラム陽性菌の発育を抑制し, BGLB培地は胆汁酸とブリリアントグリーンによってグラム陽性菌の発育を抑制しています。回答者の経験では, LST培地はBGLB培地よりも大腸菌群以外の細菌の発育抑制が“弱い”と感じていて, 食品中に損傷菌が存在する場合はLST培地の方がよく検出できると思います。

〔回答2〕食品の大腸菌群検査の方法に関して, 日本の歴史的背景が記載されている参考書として適当なものが思い浮かびません。しかし, 水に関する大腸菌群の検査方法については, 社団法人 日本水道協会発行の上水試験法解説編 (2001年版) に記載されていて大変参考になります。また, 直接, 大腸菌群の検査についてではありませんが, 1973年版の「食品衛生検査指針」の冒頭に“発刊にあたって”という内容で, 編集委員会委員長 (川城巌氏) の内容を抜粋しますと: 

 食品衛生検査指針の最近版は昭和38年1月に発刊された。本書は急速に進展する科学技術の世界において約10年間放置されてきたことになる。アメリカのAssociation of Official Analytical Chemistsから5年ごとに改訂版が発行されている国際的に有名なOfficial Methods of Analysisの第1版は1920年に出されたというから、この書はすでに50年以上連綿と版を重ね、しかも常にUP-TO-DATEな内容であるための努力は現在も絶えず継続されている。われわれはこの事実を見るにつけ、われわれの指針に対する態度を深く反省しなければならない。本書は、統一された検査術式によって、確実な科学的データを把握でき、これに基づいて適切な行政措置も行われるし、また、食品業界も本書を活用すれば、正しい良い製品を消費者に提供できるという自信がおのずから生まれる結果となり、このような両面が相まってこそ食品衛生の完璧が期待できるものと筆者は確信する。

 現在, AOACは120年を越して活動を継続していて, この会員になればHPでいろいろな検査法を検索できます。BAM法もAOACで評価されたものです。下記の情報も参考にしてください。
http://www.eiken.co.jp/mi/es/pdf/es23.pdf

(日水製薬・小高 秀正)

【質問者からのお礼】
 お忙しいところ, ご丁寧なご回答くださいましてありがとうございました。

 引き続き微生物検査について勉強する所存でおりますので, 今後とも宜しく願いいたします。


戻る